札幌市の2023年のエイズ患者と発症していないエイズウイルス(HIV)感染者の届け出数は前年比15人増の34人で、今の調査方法となった1999年以降、2番目の多さだった。梅毒の届け出は同30人増の469人で過去最多。市は新年度からHIVと梅毒の検査の上限人数を増やす。

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■24年度 検査人数を増
 市保健所によると、エイズ関連で届け出た34人のうち患者は14人、HIV感染者は20人。うち男性は32人、女性は2人で、感染経路は21人が同性間の性的接触だった。市のエイズ患者・HIV感染者は人口10万人当たり1.73人。全国に20ある政令指定都市のうち、名古屋市3.27人、大阪市2.24人に次いで多い。
 梅毒に関しては、感染後約3週間の「1期」が240人で最も多く、次いで発症後約4~10週間の「2期」が132人、無症状病原体保有者が89人など。感染経路は異性間の性的接触が男女とも最多で、男性は感染した234人中193人、女性は235人中200人を占めた。
 HIVと梅毒に関して匿名と無料で行う検査の規模について、市は20~22年にコロナ禍を理由に縮小した。23年はコロナ前並みに戻したため、前年を上回り感染事例が増えたとみられる。梅毒は全国的に増加傾向で札幌でも増えている。
 市は24年度、匿名と無料で受けられるエイズと梅毒の検査について、訪れやすい休日の検査上限人数を年間80人から96人に増やす。検査に訪れる人数が現在、上限いっぱいになっているためだ。23年度からは、エイズ患者を支援するNPO団体とも連携し、新たにマッチングアプリで検査に関する広告を出すなどしている。市は「患者への差別や偏見をなくし、早期治療につなげようと力を入れている」とする。
 市内では発症して初めて感染に気づく「いきなりエイズ」の割合が23年は41.2%で、前年比14.9ポイント増。北大病院HIV診療支援センター副センター長の遠藤知之医師は正しい知識が乏しい状況に触れ、「根強い差別の存在なども、自発的な検査につながらない要因なのでは」と指摘する。

2024年3月5日 23:38(3月6日 0:04更新)北海道新聞どうしん電子版より転載