高齢者宅の除雪や草刈りの担い手として、地域で頼りにされてきたシルバー人材センターや高齢者就労センターの会員が十勝管内でも減少している。企業などで働き続ける「現役」の高年齢者が増え、新たな入会者が減っていることが要因だ。人手が足りないため仕事の依頼を断らざるを得ず、解散したセンターもある。シニア世代の生きがいと健康づくりを目的に掲げた組織が今、岐路にある。
 2月中旬、帯広畜産大1年の木原淳兵さん(19)らが、帯広市内の高齢者宅の雪かきに汗を流していた。依頼した大野博純さん(88)は「シルバー人材センターに断られて困っていた。本当にありがたい」。

高齢者宅で雪かきする「雪かき隊」代表の木原さん(左)ら帯広畜産大生

木原さんは、同センターが長年担ってきた帯広市の「福祉除雪」の受託をこの冬断念したと聞き、ボランティア団体の仲間や友人らと「雪かき隊」を結成した。約40人の隊員が2、3人で一組になり、雪が積もるたびに30~40軒ほどを回る。
 同センターが受託を断念した要因は、会員数の減少だ。2005年の873人をピークに、今年2月時点で403人と半分以下に。仕事の受注件数も22年度が4216件と10年で4割近く減った。

 新規加入者が少ない分、高齢化も進み、22年度の平均年齢は76.0歳。10年で3.9歳上がり、除雪など体力のいる仕事の担い手減少に拍車をかける。福祉除雪は、自力での除雪が困難な、低所得の単身高齢者宅の玄関前の雪を払う市の在宅生活援助サービスで、例年40~50人分を請け負ったが、手が回らなくなった。
 音更町社会福祉協議会が運営する高齢者就労センターも会員減少に悩む。23年度の会員数は10年前より6割減の125人。町の福祉除雪は民間事業者が受託しているが、これとは別に同センターが受け付けている除雪依頼をこの冬は昨年の80件から70件に制限した。
 本別町社協が運営する高齢者就労センターは18年度末で解散した。ピーク時に80人だった会員が19人まで減少し、仕事の依頼があっても受けられなかった。事務局は「70歳を過ぎても現役でバリバリ働いている人もいる。『生きがいのための就労』を掲げるセンターは、時代に合わなくなったのでは」と指摘する。
 一方、道内では会員減少から増加に転じる工夫をした組織もある。江別市シルバー人材センターは18年に会費規定を見直し。年会費2400円を超える配分金分の仕事をするまでは納入しなくてもよくしたところ、退会に歯止めがかかった。サークル活動などを目的に入会する人もおり、18年度の697人から22年度は950人に増加した。
 ただ、会員の高齢化は避けられず、同センターは「いずれは、除雪などは対応が難しくなるかもしれない」と懸念する。
■地域貢献 何ができるか立ち返って
 シルバー人材センターに詳しい城西大の塚本成美教授(経営社会学)に課題や求められる役割を聞いた。

 シルバー人材センターは元々、地域貢献のためにつくられた自治的な組織だ。だが、多くの人は、高齢者に仕事をあっせんする組織だと捉えているために「もらえるお金は少ないし、培ったスキルを生かせる仕事もない」と不満を感じてしまう。特に除草や庭木の剪定(せんてい)といった外仕事は体力的にもきついため、やりたがらない会員が多く、発注に応えられない状況が全国で起きている。
 収入を得るための仕事探しに重点を置くならば、ハローワークがあり、高齢者専門の人材派遣会社もある。シルバー人材センターを今後も継続するには、地域のためにどんな貢献ができるかという原点に立ち返ることが重要だ。
 例えば福祉除雪や、公園や道路の清掃。子育て世帯や介護が必要な人への支援も求められている。公共的なサービスを全て行政で提供するのは難しい時代に、これらを安価に請け負えるのがセンターの強みであり、高齢者の居場所づくりや世代間交流、地域の自治にもつながると考えている。

2024年3月3日 21:28北海道新聞どうしん電子版より転載