世界各地ではしかの感染が拡大している。世界保健機関(WHO)によると、2023年は前年比8割増の30万人以上の感染が報告され、特に欧州での増加が目立つ。背景に新型コロナウイルス流行時、はしかのワクチン接種率が下がったことがある。日本でも2月以降複数の感染例が出ており、今後拡大が懸念されるとして、厚生労働省はワクチン接種を呼びかけている。
 WHOによると、ロシアや中央アジアを含む欧州地域での感染報告数は22年の937人に対し23年は5万8千人を超え、60倍以上となった。英国など過去にはしかの排除を宣言していた国からも多くの報告が上がった。
 日本では15年にはしかの排除状態にあるとWHOに認定された。19年には排除後最多の744人となったが、コロナ禍の20~22年は10人以下に減少。23年は28人に増加した。新型コロナで制限されていた人の往来が活発になるにつれ、海外からウイルスが入り込むリスクは高まる。今年に入って奈良市で外国人観光客の感染が確認されたほか、東京都では感染経路が不明の0歳男児の感染が報告されている。
 拡大の原因の一つと指摘されるのがワクチン接種率の低下だ。はしかは感染力が非常に強く、マスクでは防げない。唯一の予防策がワクチンだ。しかし、米疾病対策センター(CDC)によるとここ数年、医療資源が新型コロナ対策に集中し、世界的にはしかワクチンの接種の機会を逃した人が多いとみられる。
 流行を防ぐには人口の95%がワクチンを2回接種することが望ましい。日本では乳幼児期に2回の定期接種があるが、厚労省によると、2回接種を終えた割合は20年度以降減少し、22年度は92・4%だった。厚労省の担当者は「母子手帳などを確認し2回打っていなければ接種を検討してほしい」と話している。
 はしか 感染力が極めて強く、同じ空間にいるだけで空気感染する。ウイルスに免疫がなければ感染後約10日で発症し、発熱やせき、鼻水など風邪に似た症状が出る。先進国でも千人に1人が死亡するとされる。有効な予防法はワクチン。確実に免疫をつけるには2回の接種が望ましいとされ、現在1歳と小学校入学前1年間の計2回の定期接種が行われている。厚生労働省によると、2000年4月1日以前に生まれた人は2回の定期接種を受ける機会がなく、接種回数が不足している可能性がある。

2024年3月2日 16:07(3月2日 18:08更新)北海道新聞どうしん電子版より転載

 

・はしか感染・死者数が増加 予防接種率低下が影響

【ジュネーブ共同】世界保健機関(WHO)と米疾病対策センター(CDC)は16日、2022年にはしかの感染者が世界全体で前年比18%増の923万人、死者が同43%増の13万6千人となったとの推計を公表した。
 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行で医療機関が逼迫したことを受け、予防接種率の低下が続いたことが大きく影響した。22年に大規模流行が確認されたのは37カ国に上り、21年の22カ国から大幅に増加した。
 22年のワクチンの接種率は1回目が83%で、2回目は74%。はしかの大規模流行を防ぐためには2回接種完了率が95%必要とされており、依然として開きがある。
 特に低所得国での1回目接種率は66%と低迷している。1回目の接種率が95%を超えている国も65カ国にとどまっている。

2023年11月17日 5:57北海道新聞どうしん電子版より転載