「共助」の基盤となる町内会が岐路に立っている。大館市で昨年、役員の人材難を理由に二つの町内会の解散が明らかになったことを受け、関係者に衝撃が走った。同じ悩みを抱える会は数多く、「人ごとではない」の声も。9日には田代地域まちづくり連絡協議会(藤島光雄会長)が地元市議を交えて意見交換会を開き、課題解決の糸口を探った。
 市内では昨年5月に美園町内会、11月に餅田団地町内会が解散。いずれも役員の担い手が見つからず、運営維持が困難と判断したという。社会福祉協議会などでつくる支え合い推進会議は、両町内とも最低限のつながりを維持できるよう支援に当たっている。
 田代公民館で開かれた連絡協の意見交換会には田村儀光議員、田村秀雄議員、吉田勇一郎議員を招き、単位協議会から約20人が参加。「町内会組織を将来につなげるため、その課題と対策を考えよう」をテーマに、3班のグループワーク形式で行った。
 美園町内会の加入率が6割だったことに着目し、「田代地域はほぼ100%で問題点が異なるのではないか」としながらも、役員のなり手不足や若年層の参加が少ないなど共通項があることを確認。共働き世帯や定年後も働く人が多く、「役員をやらなければいけないなら町内会を抜ける」という住民もいるとして、同じ人が役員を続けざるを得ない状況が示された。
 対策として「子どもを地域の宝として大事に育てる意味合いの行事を催してはどうか」「若い人を巻き込まないと次代につながらない」などの声が上がった。交流名目のイベントを企画してみたい住民に任せ、町内会が費用助成したところ若い人の参加が多かったという事例も紹介された。
 「美園町の町内会長は解散に至るまで相当悩んだだろう」。ある参加者はポツリと漏らした。田代地域では10世帯前後の組織が少なくなく、「近隣の会と合併の道を探ってはどうか」との意見も出た。
 行政の支援を求める声もあった。支え合い推進会議は総合窓口を設けるよう市に要望している。福原淳嗣市長は2日の定例会見で「既存の組織で対応できる」とした上で、「新しい官民連携の形を議論しなければならない。暮らしをつなげる民間サービスが数多くあり、それを助言するために行政はもっと勉強しなければならない」との考えを示した。
 意見交換会の終盤、田村儀光議員は「町内会の在り方について市民の関心が高まっている。市は任意団体だから強く関われないというが、町内会長の多くが行政協力員を兼務しており、その姿勢を見直すよう訴えていきたい」と話した。

町内会の課題と対策を考えた田代地域まちづくり連絡協の意見交換会(田代公民館)

2024-02-11北鹿新聞フェイスブックより転載

 

・【町内会が運営危機 美園町は5月に解散 高齢者増、担い手不足 市社協が支援に着手】

少子高齢化などを背景とした町内会組織の運営継続が大きな課題となっています。大館市内では、解散や活動休止となっている町内会が増加傾向にあります。市生活支援体制整備事業で関わりを持つ大館市社会福祉協議会によると、人材不足や参加者の減少、関心の薄さなどが主な理由。70歳代の町内会長が全体の約6割を占め、存続事態が難しい現状にあるといいます。若い世代が参加しやすい仕組みづくりや活動の見える化を図り、課題解決に向けた支援に着手し始めています。

48年続いた美園町町内会は2023年5月、役員の担い手不足などを理由に解散しました。会長を15年務めた男性は「新役員を担ってくれる人を探していたが、手を挙げる人はいなかった。解散は残念だが致し方ない」と肩を落とします。

美園町では、現在約150世帯の住民が暮らしている。5月時点で町内会員は95人。これまで年2回の清掃活動や、城西地区の運動会の参加、子ども会などの行事を行ってきました。4月の定時総会に続いて臨時総会を開き、話し合いを重ねましたが新役員は決まりませんでした。活動の継続が困難と判断し解散を決めました。

今後、月1回行っていた一人暮らし高齢者の家庭訪問はなくなり、市の広報などは行政協力委員を務める元会長が各家庭に配布します。徴収した会費のうち残った現金は元会計監査らが管理し、街灯やごみステーションの維持費として使用。ごみ置き場は従来通り各班の持ち回りで管理することとしました。

住民女性(69)は解散後の困り事について「雪解け後に穴の開いた道路の補修や危険箇所の相談などは元会長が対応してくれていたが、今後はどこへ連絡したら良いかも分からない」と表情を曇らせます。

市社協は1月、市内341町内会長を対象としたアンケート調査を実施。291人が組織体制や活動内容について回答しました。このうち、運営についての悩みで最も多かったのは「役員のなり手がいない」の227人。次いで「役員が高齢化している」が197人でした。

町内会が抱える課題について最も多かったのは「一人暮らし高齢者世帯の増加」の179人。自由記述欄では「半数近くが70歳以上で思い切った活動ができない」「個人情報保護法で名簿や町内会の地図も作りにくくなり、住民同士の横のつながりが弱くなった」などの意見が挙がりました。3月に集計結果をまとめた報告書を市に提出し、行政と町内会の連携強化を求めました。

「解散は残念だが、人ごとではない」と語るのは、美園町内会と隣接する城西町内会の会長。共働き家庭が増え、若い世代が参加する機会が減ってきているとし「どこも同じような問題を抱えている。それでもなくすわけにはいかないので、交流する場を設けながら試行錯誤しているところ」と語りました。

元会長は「町内会がなくなれば不便な所も出てくるだろう。仕事などで忙しいことも理解できるが、住民には町内のために協力する気持ちを持ってもらいたい。未来の子どもたちのためにも新たな立ち上げを願っている」と切実な思いを訴えました。

市社協の担当者は、若い世代が活動しやすい仕組みづくりが必要だとし「(無料通信アプリの)LINEなどを使った簡略化、活動の見える化を図りたい。今後は話し合いの場を設け、維持できるような工夫を考えながら問題解決に向けて動いていく」としています。
(北鹿新聞 2023年08月07日)

2023/08/27 08:00社協探検隊が行くブログより転載

 

・自治会、都内で6年間に144減 「役員の負担重すぎる」相次ぐ解散

自治会・町内会の活動が、岐路に立たされている。東京都の自治会など「地縁団体」の数の調査によると、都内23区と26市で、昨年は6年前と比べて144減っていた。高齢化などによる担い手不足が主な理由だという。

 国の調査によると、加入率も年々、減っている。自治会は地域のコミュニティーづくりや防災・災害時の助け合い、行政機関への要望など多くの役割を担ってきた。住民の生活スタイルが多様化する中で、どのように持続可能なものにしていくかが課題だ。

アンケート実施中:「自治会・町内会」について、あなたの考えや経験を教えてください
 東京都は、地縁に基づいて形成された自治会や町会、区会などを「地縁団体」と定義し、毎年集計している。自治会は、マンションなどができて新設されることもあれば、解散してなくなったり、複数の会が合併したりすることもある。都はそれを差し引きした数を集めている。

 49区市の地縁団体の数は、現在の定義で集計を始めた2016年は8931だったが、22年には8787と144減少した。49区市のうち、全体の数が減った自治体は27。一方、10自治体では増えていた。

 最も多く減っていたのが調布市で、マイナス41。市によると、解散の主な理由として「高齢化による後継者不足」「会員数が少なく、自治会の意味がない」などがあがった。加入率も、12年度の46・9%から、21年度は36・8%と減っているという。

 調布市に次いで減少数が多かった清瀬市では、22年までの10年間に30の地縁団体が解散。新たに三つできた。

 23区では港区が最も減っており、22年までの10年間で解散は15(新設は7)だった。解散理由は、「住宅地の再開発、人口流出」のほか「会費の徴収が困難になった」「役員の高齢化、役員数の恒常的な不足」などだった。

 こうした傾向は全国的にも同じだ。

 内閣府の調査(回答市区町村:1157、16~17年)では、自治会の課題として、「役員・運営の担い手不足」が86・1%と最も高く、次いで「役員の高齢化」が82・8%だった。その後「近所付き合いの希薄化」「加入率の低下」が続いた。

 加入率も減少傾向だ。

 総務省の、毎年度の自治会の加入率を把握している624市区町村を対象にした調査によると、政令指定都市では、10年度に77・2%だったのが、20年度には70・3%に。ほかの市区町村でも減少傾向だった。

 懸念されるのが、地域社会を支える組織がなくなることだ。総務省も21年、大学教授や街づくりコンサルタントらによる「地域コミュニティに関する研究会」を設置した。22年4月に出された報告書では、自治会活動の持続可能性を高めるため、負担を減らす必要があると言及。回覧板などを使った情報伝達や、防犯灯・ごみステーションの設置管理、民生委員の推薦など、自治体が協力を依頼している業務について、見直す必要があると提言した。

 また、情報共有を効率化するため、電子回覧板やオンライン会議など、市区町村が自治会のデジタル化に取り組むことの必要性にも触れた。

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 体験談やご意見をお寄せください。メールでdkh@asahi.comメールするまで。(片田貴也、篠健一郎)

2023年2月12日 6時00分朝日新聞デジタルより転載