健康保険の任意継続とは?
会社を退職した後の健康保険の選択肢には、加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)の任意継続被保険者になる、新たに国民健康保険に加入する、家族の加入する健康保険の被扶養者になる、の3つがあり、退職される方の状況によっていずれかを選択することになります。
家族の加入する健康保険の被扶養者になれば保険料の負担はありませんがそうでない場合、一般的には国民健康保険に加入するよりもこれまでの健康保険を任意継続する方が保険料負担は少なく、任意継続を選ぶ方が多いかと思います。

任意継続するには、資格喪失日(注1)前日まで2カ月以上継続して被保険者であることおよび、資格喪失日から20日以内の手続きが必要です。

なお、在籍中は会社と折半(注2)であった保険料は退職後は全額が自己負担となります。また以前であれば任意継続の期間は2年であり、基本的に途中脱退が認められていませんでした。
(注1)資格喪失日とは退職日の翌日のため、資格喪失日前日とは退職日となります

(注2)健康保険組合では折半でなく、加入者に有利な料率が用いられていることもあります

2022年(令和4年)からは任意継続の途中脱退が可能になっています
前項で以前であれば任意継続期間は2年であり、基本的に途中脱退は認められていないと紹介しましたが、2022年(令和4年)からは途中脱退が可能となっています。
たとえば退職時に任意継続を選択していたものの、家族の健康保険の被扶養者となれる状況や、国民健康保険を選択した方が保険料は安くなる状況(国民健康保険料は前年所得や世帯人数で決まる)となる場合でも、以前であれば2年間は任意継続をやめられず、高い保険料を払う必要があったわけです。

これが、2022年(令和4年)以降は、任意継続している被保険者本人の希望により途中で脱退できるようになり、保険料の負担を少なくすることが可能になりました。

任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直し(健康保険組合)
また健康保険組合については、任意継続被保険者の保険料算定基礎の見直しも行われています。これまでは任意継続被保険者の保険料は「退職前の標準報酬月額」もしくは「会社の全被保険者の平均の標準報酬月額」の、どちらか低い額が基準とされていました。これが組合の規約で定めれば「退職前の標準報酬月額」とすることが可能になっています。
一般的に、定年直前の年収は高くなるため、「退職前の標準報酬月額」が「会社の全被保険者の平均の標準報酬月額」より高いケースは多いです。したがって、健康保険組合加入者が定年退職時に任意継続を選択し、「退職前の標準報酬月額」が基準となると、保険料負担が増えることも考えられます。

まとめ
退職後の健康保険についてはどの選択をするか悩ましいところです。家族の加入する健康保険の扶養に入れるのであればそれが一番よいのですが、そうでない場合は国民健康保険と現在加入している健康保険の任意継続を比較検討することになります。
以前であれば任意継続を選ぶと2年間は脱退できず、途中で状況が変わった場合には保険料が割高になることもありました。

2022年(令和4年)からは2年の途中でも脱退が可能になっていますので、任意継続を選ばれた方は状況に応じ、途中見直しを検討されてよいのではないでしょうか。

《参考》厚生労働省 第140回社会保障審議会医療保険部会

文:川手 康義(ファイナンシャルプランナー)

CFP・1級FP技能士。製薬会社に勤務し、お金にも詳しいMR(医薬情報担当者)として活躍。日本FP協会に所属しており、協会会員向けの研修会や一般の方へのセミナーの企画・運営活動にもボランティアとしてかかわる。

川手 康義(ファイナンシャルプランナー) によるストーリー • 3 時間