フードバンクの活動を15年以上続けている、全国フードバンク推進協議会代表理事の米山広明さん(40)に、課題や将来目指すべき姿について語ってもらった。
 2019年に企業・行政・家庭に食品ロス削減の努力義務を定めた「食品ロス削減推進法」が施行されました。それに伴い、食品を製造したり、販売したりする企業とフードバンクの連携が広がっています。


■活動盛んに
 農林水産省などによると、食品ロスの発生量は00年度の980万㌧から、21年度523万㌧まで減りました。流通経済研究所が把握するフードバンクの団体数は、00年度は全国に一つしかなかったのですが、23年度は11月末時点で252団体です。家庭で余った食品を学校や小売店などに持ってきてもらう「フードドライブ」活動も盛んになってきました。
 現状では、企業とフードバンクとの連携は徐々に進んでいますが、十分とは言えません。企業側の理解も重要な一方で、フードバンク側も積極的に企業に食品提供を呼びかけることが大切です。企業から信頼を得られるような活動を行うことで食品だけでなく、活動資金となる寄付金も集まりやすくなります。
 人口集積地とそうでない地域で、課題が異なることにも配慮が必要です。
 都市部では、企業から支援や提供を受けやすいのですが、事務所や食品を保管する倉庫などの維持費の負担が重くなります。地方では、農家などから食品が提供されることがある半面、加工食品を集めにくい傾向があります。
 求められる食品の種類に関しては、調理に電気やガスなどを必要とせず、長期保存できることが重要です。困窮している人は、自宅で電気・ガスなどのライフラインが止まっていることが珍しくないのです。
 各団体の運営は課題が山積しています。資金やボランティアなどの人手が足りず、活動が破綻してしまうことも珍しくありません。北海道では、面積に対して人口が少ない地域が多いため、食料を配布するためのコスト負担も大きくなります。
 道内団体間の連携を図る「北海道フードバンクネットワーク」のような枠組みは、問題解決の方法として有効だと考えます。団体ごとに偏った食品や団体運営のノウハウなどを共有できるだけでなく、食品を提供したい企業がフードバンク団体ごとにやりとりする手間が省けるというメリットもあります。
■基金を要望
 持続的な活動のためには行政の支援が欠かせません。農水省がフードバンクへの支援のために、23年度の補正予算で3億5千万円を支出していますが、単年度予算な上、用途が限られていて、活動の拡大を図るには不十分です。そこで、全国フードバンク推進協議会では、全国のフードバンクを支援する基金の設立を国に要望しています。
 人口30万人規模の地域をフードバンク1団体が支えるとすれば、全国に410団体以上必要です。健全な運営のために1団体当たり年間2500万円かかるため、年間100億円以上必要になる計算です。
 地方自治体とフードバンクが連携するケースも増えています。フードドライブの支援やフードバンク団体への補助金を出している自治体もあります。北九州市の団体は、市から無償で貸与された保有施設を食品保管用の倉庫として使っています。神奈川県では、県が企業にフードドライブの実施を要請するなど、予算のかからない方法で、団体との連携も行われています。
 フードバンクの活動は食品ロス削減と困窮者支援の狙いがあるため、国内では行政組織内で担当部署が分かれていることが多いです。フードバンクとの連携が活発な奈良市などでは、首長が強いリーダーシップを発揮しています。道内でも、行政とフードバンク団体の連携が深まることを願っています。(聞き手・神田幸)
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「アメリカでは、フードバンクが食品ロス削減と経済的な困難を抱える世帯への食料供給に大きく貢献している」と語る米山広明さん
<略歴>よねやま・ひろあき 1983年山梨県櫛形町(現南アルプス市)生まれ。愛媛大理学部卒業後、2008年の「フードバンク山梨」設立時よりフードバンク活動に携わる。15年に東京で発足した全国フードバンク推進協議会の事務局長を務め、22年より現職。フードバンク団体の立ち上げ支援や育成、企業との連携促進、中央省庁や国会議員に対する政策提言に取り組む。23年から消費者庁の食品ロス削減推進会議委員。2024年2月20日 5:00北海道新聞どうしん電子版より転載