歌手の八代亜紀さんが膠原(こうげん)病の一種の病気で死去した。ちまたでよく聞かれる膠原病は、実は病名ではなく、日本国内では疾患群を指す。膠原病に入る病気は100種類以上あり、症状が似たような病気も多い。専門医でなければ診断がつかないこともあり、「何だかよく分からない病気」の総称として使われている側面もある。膠原病とは、どんな病気なのか。

■発熱、関節の痛み、息切れ… 症状多様 専門医に相談を

 膠原病は1942年に米国の病理学者によって命名され、欧米ではリウマチ学の部類に入る。現在は「結合組織疾患」「リウマチ性疾患」と呼ばれることが多い。血液中のリンパ球(自己反応性リンパ球)や抗体(自己抗体)が反応して患者自身を攻撃する自己免疫疾患だ。

 日本リウマチ学会専門医・指導医で、「さっぽろ内科・リウマチ膠原病クリニック」(札幌市北区)の近祐次郎院長によると、全身性エリテマトーデス、リウマチ熱、強皮症、皮膚筋・多発性筋炎、結節性多発性動脈周囲炎、関節リウマチが古典的膠原病と呼ばれる。現在はこの6疾患に加え、シェーグレン症候群、混合性結合組織病、成人スティル病、ANCA関連血管炎、ウェグナー肉芽腫などが加わり、国の特定疾患(難病)に指定されている病気も多い。

 膠原病の症状は発熱、倦怠感、体重減少、疲労感などの全身症状のほか、関節や筋肉の痛み、皮疹(発疹)、息切れなどがある。シェーグレン症候群のようにドライアイ(目の乾燥)やドライマウス(唾液不足、口の渇き)といった症状が出る病気もある。診断は血液検査や症状などを基に判断する。

 膠原病は他の病気と区別が付きにくいこともある。例えば強直性脊椎炎は特定の血液型に多い膠原病だが、腰や背中、お尻の痛みが出る。40歳以下で発症する人が多いが、症状から患者は整形外科などを受診し、15年以上たって診断名がつくこともある。男性に多い痛風も実は関節リウマチだったということもあるという。

 膠原病全般の治療は一般に炎症と免疫を抑えるステロイド(免疫抑制剤)が第1選択となる。近院長は「近年はさまざまな免疫抑制剤が開発され、症状の改善に大きな効果を上げている。例えば全身性エリテマトーデスはかつて予後が悪く、10%ほどの人が亡くなっていたが、現在は0.4%程度になった」と指摘。その上で、「すべての疾患の治療法が確立しているわけではなく、死亡や重い障害となることもある」と語る。

 八代亜紀さんが発症した「抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎」は高齢になって突然発症する。典型的な皮膚筋炎の皮疹の症状が出る一方、筋症状(筋肉の炎症)が少ないが、しばしば急速に進行し、致命的な間質性肺炎を引き起こし、死に至るという。

 近院長は「膠原病の中にはまだ原因となる抗体が分からない疾患も多い。ただ、喫煙は発症・悪化の明らかなリスクで、薬の効果も下げるので禁煙することが大切。体調が悪いのに診断名が付かない場合は膠原病を疑い、リウマチ専門医を受診してほしい」と話す。(編集委員 荻野貴生)

2024年2月14日 5:00北海道新聞どうしん電子版より転載