厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が公表した地域別推計人口で、2050年時点の15~64歳の生産年齢人口を20年と比べたところ、699市町村が半数未満に減ることが11日、分かった。共同通信が公表データを分析した。全市区町村の4割に当たり、地方の小規模自治体の落ち込みが目立つ。道内は112市町村で、全体の6割超に上る。横ばいか、増加するのは千葉県や東京都などの19市区町村にとどまった。


 働き手の中心を担う年齢層が大幅に減ると、地域の産業や福祉の人材不足に直面するほか、自治体運営や交通・物流の維持が困難になる恐れがある。少子化対策の強化と東京一極集中の是正が喫緊の課題だ。
 全国の15~64歳は50年時点で5540万2千人となり、20年比で26・2%減。減少率で市区町村の数を分類すると、80%超が6で、最も高いのは京都府笠置町の84・1%。奈良県吉野町81・2%、熊本県球磨村81・1%と続いた。道内は歌志内市が該当し、減少率は球磨村に次ぐ81・0%だった。80~70%超は66(道内12)、70~60%超は234(同31)、60~50%超は393(同68)だった。
 増加、もしくは横ばいとなる19市区町村のうち、東京都の特別区が10を占めた。増加率が最も高かったのは千葉県流山市の13・4%。道内は増加や横ばいはなく、減少率が最も低かったのは後志管内ニセコ町の16・0%。次いで千歳市の22・8%、上川管内東川町の22・9%、十勝管内上士幌町の24・8%、札幌市の25・3%と続いた。
 15~64歳が半数未満に減る市町村の割合を都道府県別に見た場合、最も高いのは秋田の96・0%で、秋田市を除く県内24市町村が該当する。次いで青森80・0%、高知76・5%、岩手75・8%など。北海道は62・6%だった。低いのは沖縄の2・4%、東京の3・2%だった。
 50年時点の15~64歳の都道府県別人口は47全てでマイナスになる。減少率トップも秋田の52・3%、次いで青森51・7%、岩手46・1%などで、東北地方の落ち込みが顕著だった。北海道は37・5%。最も低いのは東京の6・3%で、労働力の偏りも浮かんだ。
 社人研は昨年12月、20年国勢調査を基に50年までの地域別推計人口を公表した。少子化が止まらず、0~14歳も47都道府県で減少。一方、高齢化の進行により65歳以上が占める割合は25道県で40%以上になるとした。15~64歳が全体の人口に占める割合は、20年の59・5%から50年は52・9%に低下するとしている。
 道内の生産年齢人口の減少について道地域戦略課は「子育て支援や移住政策の推進で急激な減少を緩和しつつ、人口減少下で地域を持続させていく適応策を具体的に考える必要がある」としている。


 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は2020年国勢調査を基に、出生率や死亡率が3段階のうち「中位」と仮定した将来推計人口を市区町村別に算出して昨年12月に公表した。このデータから、生産年齢人口を示す15~64歳の人口を20年時点と50年時点で比較、半数未満になる市町村を抽出した。福島県沿岸部の浜通り地域の13市町村は、東京電力福島第1原発事故の影響が長期化しているため、社人研は1地域として推計した。
<ことば>生産年齢人口 労働力の中核を担う15~64歳の人口。1945年の終戦以降は一貫して増加し、国勢調査によるとピークに達した95年は8716万人で、総人口の69・5%を占めた。その後は少子高齢化の進行に伴い減少し、総務省の人口推計によると、2022年は7421万人、割合は59・4%に低下した。都道府県別に見ると、東京がトップの66・3%だった一方、秋田が最も低い52・1%で、島根と高知がともに53・3%と続いた。2024年2月11日 23:35北海道新聞どうしん電子版より転載