少子化を背景に人材確保が難しくなる中、その流出防止のため、職場環境の改善は欠かせない。海上保安庁も国家公務員の「働き方改革」の制度が適用されている。

 代表例の一つがフレックスタイム。第1管区本部(小樽)の場合、勤務時間は午前8時30分~午後5時15分(昼休みは午後0~1時)の1日7時間45分。コアタイムの午前10時~午後4時を除き、15分単位で早出・遅出でき、昼休みも15分単位で短縮できる。例えば45分早く出勤し、昼休みを半分の30分にすると、午後4時に退庁して、保育園へ子どもを迎えに行くことができる。

 同本部で働く193人のうち、1組の夫婦と、既婚女性1人の計3人が利用中だ。ただし当然とはいえ、巡視船艇の乗組員は利用できない。

 では育児休業はどうか。この場合は陸上職場へ異動して取得するが、総務部長・蓮見純は「1年もとる職員はほとんどいない。通常は2週間から1カ月なので休暇時と同じく、みんなでカバーしている。周囲の理解も進みましたから」と語る。

 他機関の国家公務員と同じく、1年の育児休業をすると、共済組合から基本給の約6割しか支給されないことも背景にある。

 それでも海上保安庁の男性育休取得率は18年度の2・8%から22年度は38・7%へ急伸し、政府が設定した目標「25年度で30%」を3年早くクリアしている。

 「1年も育休をとる職員はほとんどいない」という蓮見だが、自身は男性の取得が珍しかった10年4月から1年間、取得した。

 蓮見のパートナーは、室蘭出身で同管区本部初の女性署長になった苫小牧海保署長・蓮見由絵(よしえ)。海上保安大学校の1期後輩だ。由絵が2人の子育てで、約3年半育休した後に職場復帰したタイミングでとった育休だった。蓮見は「ちょっと視点が変わった。効率的に仕事をして、終わったらさっさと帰るようにして」と振り返る。

 海上保安庁での職場結婚は珍しくない。その場合、「夫婦は可能な限り同居させている」(1管区本部人事課長・高橋健)。同じ小樽地方合同庁舎にある1管区本部と小樽海保で勤務する302人のうち、6組12人が共働き組だ。ただし同管区本部では小樽のほか、職場の規模が大きい釧路や函館などに事実上、限定される。

 一連の対応が効果を上げているのか、それとも仕事にやりがいがあるのか。3年以内の離職率は民間企業で一般的に30%とされているが、海保ではそれほど高くはない。海上保安学校の卒業生で20年度までの7年間を見ると、最高は19年9月卒業組の13・1%で、おおむね10%前後に収まっている。(特別編集委員 本田良一、敬称略)

育休の取得後、「視点が変わった」と語る第1管区本部総務部長・蓮見純=昨年9月27日、同管区本部

2024年1月20日 9:42北海道新聞どうしん電子版より転載