2023年の特殊詐欺の認知件数が前年比1463件(8・3%)増の1万9033件になり、直近10年間で最多となったことが8日、警察庁のまとめ(暫定値)で分かった。3年連続の増加で、大都市圏の7都府県で67・3%を占めた。被害総額は前年比70億4千万円(19・0%)増の441億2千万円になり、2年連続で増えた。統計のある04年以降で認知件数、被害額ともに4番目の多さだった。

 現金化しやすい特定の電子マネーの詐取やコンピューターウイルス除去名目のサポート詐欺が目立った。警察庁の担当者は「被害者から連絡させる手口で、犯人側にとって楽なサポート詐欺の増加が影響した」と分析している。

 特殊詐欺を含む23年の刑法犯の認知件数は70万3351件となり2年連続で増えた。

 被害金の受け取り形態別で、件数、被害額ともに増加率が最も高くなったのは電子マネー型。前年比136・1%増の3343件で、額は115・0%増の21億3千万円だった。人気の高いアップル製品が購入でき、現金化しやすい「アップルギフトカード」を狙う詐欺が増えている。

 手口別では架空料金請求詐欺が前年比75・8%増の5136件。うちパソコンなどの画面に「ウイルスを除去する」などとポップアップを表示して、被害者から連絡させるサポート詐欺が2140件に上った。多くは電子マネーを狙ったものという。

 フィリピンやカンボジアなど海外を拠点とした詐欺グループのメンバーの摘発は計69人で、統計がある19年以降で最多。「ルフィ」などと名乗り広域強盗事件を指示したとされるフィリピン拠点の特殊詐欺グループの指示役とされる男らも含まれる。

 拠点規模は国内で小型化する一方、海外で大型化しているといい、警察庁の担当者は「情報収集と海外当局との捜査共助を推進する」とした。

 特殊詐欺 対面せずに電話で相手を信じ込ませ、銀行口座に振り込ませるなどして金を詐取する犯罪の総称。2002年ごろ登場した「おれおれ」の手口が最初とされ、03年に全国で急増し社会問題化した。現在は「架空料金請求詐欺」や「還付金詐欺」「キャッシュカード詐欺盗」など計10類型に分類されている。犯罪グループは、電話でだます「かけ子」、現金を受け取る「受け子」、口座から引き出す「出し子」などに役割を分担する。統計がある04年以降で認知件数は04年の2万5667件、被害額は14年の565億5千万円が最多。

10年間の特殊詐欺の認知件数・被害額

 

2024年2月8日 10:41北海道新聞どうしん電子版より転載

 

・特殊詐欺摘発、20歳未満18% 7割超が「受け子」、23年統計

 2023年に特殊詐欺事件で摘発されたのは前年比41人(1・7%)増の2499人で、うち20歳未満が446人と17・8%を占めたことが8日、警察庁のまとめ(暫定値)で分かった。このうち7割超が、被害者から現金などを受け取る「受け子」で、摘発された受け子の5人に1人が20歳未満だった。
 2499人の中では、犯行グループの実行役の受け子や口座から金を引き出す「出し子」、それらの見張り役が計1893人で全体の75・8%と大半を占めた。一方で首謀者など中枢メンバーの摘発は62人。前年より21人増えたが、全体に占める割合は2・5%にとどまった。
 警察庁の担当者は「引き続き捜査を徹底し、中枢メンバーの摘発につなげていく」としている。
 特殊詐欺や強盗事件では、交流サイト(SNS)で実行役を募集する「闇バイト」に応募するなどして加担する若年層が目立つ。特殊詐欺では近年、20歳未満の摘発は全体の約2割で推移。実行役として使い捨てにされる傾向があり、警察は教育機関と連携し、非行防止教室を開いて特殊詐欺などの犯罪に少年少女が加担しないよう啓発している。
 警察庁によると、全体の摘発件数は前年比579件(8・7%)増の7219件だった。

2024年2月8日 16:40北海道新聞どうしん電子版より転載