【奈井江】空知管内奈井江町で65年間地域の患者と向き合う開業医の方波見(かたばみ)康雄さん(97)が、北海道新聞で連載するエッセー「いのちのメッセージ」をまとめた著書「医療とは何か―音・科学そして他者性」を、藤原書店(東京)から出版した。「この本は私の人生の歩みそのもの。生まれ育った奈井江に戻り、町医者を続けてきて良かった」と話している。
 「いのちのメッセージ」は2006年5月に本紙くらし面で連載を開始。毎月最終土曜日に掲載し、直近の1月27日で208回を数える。故郷で住民に寄り添い、現代の医療や社会、地域の人々の息遣いや生老病死をつづっている。
 同書には連載初回の「一期一会」を含む141本をテーマ別に並べて収録。寄稿や講演録と年譜も添えた。書籍化は藤原書店が7年前に打診した。方波見さんが講演で話す「医療とは、病を患う人のいのちの声に耳を傾けること」という考えに感銘を受けたからだという。
 方波見さんは内科医。北大医学部を卒業後、北大で研究や診療をしていたが、32歳だった1959年、父の荘衛(そうえい)さんが23年に開院した方波見医院を継ぐため帰郷した。以来、地域医療一筋に取り組んでいる。2017年には北海道新聞文化賞を受けた。現在は次男の基雄さん(66)が院長を務め、方波見さんが担当する週1回の外来診療は昨夏から一時休止している。
 方波見さんは「医者が聴診器で患者さんの『小さな声』に耳を傾けるように、弱き者、苦しむ者、病める者など社会の中にある小さなものに目や耳を向けてほしい」と思いを語った。四六判、452ページ。2970円。(岩本進)

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出来上がったばかりの著書を前に「連載をもう一度読みたい、という声にもいくばくか応えられた」と話す方波見康雄さん(村本典之撮影)

2024年2月7日 17:54北海道新聞どうしん電子版より転載