国立がん研究センター中央病院(東京)は今月、小児がんの患者らに、海外で使用が認められているのに国内で未承認の薬などを投与する臨床研究を始めた。日本人で薬の効果や安全性を評価し、得られたデータを将来の薬の承認に役立てる。同病院は4月以降、研究に参加する施設を増やす方針で、道内では北大病院が参加を検討する。

 小児がん(0~14歳)の新規患者は年間約2千人。国内では患者を集めるのが難しく市場規模も小さいことなどから、薬を開発する治験・臨床試験は欧米に比べて少ない。今回の研究は、海外で使える薬が国内で使えるようになるまで時間がかかる「ドラッグ・ラグ」の解消につながると期待される。

 臨床研究では、一定の条件を満たす0~29歳の患者に対し、国内未承認薬のほか、承認されているものの一部のがんで健康保険が適用外となっている薬を投与する。中央病院は今月、脳腫瘍や肉腫など5種の分子標的薬について投与を始めた。今後、薬の種類や参加施設を増やす。

 研究は保険診療が併用できる国の患者申出療養制度を利用し患者の負担軽減を図った。製薬会社が薬を無償提供し、患者は保険診療となる入院料や検査料などを負担して投与を受ける。

 研究は4年間の予定。中央病院の小川千登世・小児腫瘍科長は「研究は次善の策。最終的な目標は健康保険で受けられる承認薬を増やすことだ」と話す。

 北大病院は国のがんゲノム医療と小児がんの拠点病院に指定されており、小児がんに対する別の適用外薬の臨床試験を既に実施しているなど経験や実績がある。小児科の真部淳(まなべあつし)教授は「治療を希望する患者さんが実際に道内にいる。研究に期待している」と語った。(岩本進)

2024年1月29日 18:11(2月3日 23:15更新)北海道新聞どうしん電子版より転載