道内で新型コロナウイルス感染者が初めて確認されてから28日で丸4年となった。昨年5月に感染症法上の位置づけが2類相当から5類へ引き下げられた後も道内で40万人超が感染したとの推計もあり、終息はなお見通せない。新変異株「JN・1」などによる感染「第10波」に入ったとの見方がある中、季節性インフルエンザB型が広がりやすい2、3月を迎える。医師らはウイルスとの「共存」を前提に、メリハリの利いた対策を呼びかける。
 「熱があるの? いつから」。今月24日、札幌市中央区の円山ため小児科の診察室で、多米淳院長(63)が受診に来た子どもに尋ねた。今も毎日のように数人をコロナと診断する。この日は午前中だけで2人の陽性が分かり「また少しずつ増えていると感じる」。
 同院では新型コロナ禍が始まってから、診察をインターネットでの予約制に変更。待合室での感染を防ぐためで、1人ずつ入ってもらう時期もあった。5類移行を機に複数の人が待合室で順番を待つ通常の体制に戻すなど、コロナ禍前に近づいているという。
 道内で最初の感染者が確認されたのは2020年1月28日、中国から訪れた観光客だった。感染拡大の波は9回あり、道内の1日当たりの新規感染者数はオミクロン株による第8波のさなかの22年11月22日、最多の1万1394人を記録。この日を含む1週間で5万9千人の感染者が出た。
 感染の主流は現在もオミクロン株の系統で、主な症状は38度程度の発熱や喉の痛み、倦怠(けんたい)感など。感染力が強い一方、重症化リスクは低いとされる。
 5類移行後、国や道の統計は毎日の「全数把握」から指定医療機関の報告に基づく週1回の「定点把握」に簡略化され、感染者の実数は分からなくなった。道内の直近1週間(15~21日)の指定医療機関1カ所当たりの感染者数は10・78人と、前週比0・25人増。札幌医大ゲノム医科学部門の独自推計によると、15~21日の感染者数は約1万4千人とされ、5類移行前の22年夏から秋にかけての第7波の序盤に近い水準だ。
 5類移行後の感染者数は44万人程度に上るとみられ、移行前の136万人の3割強に当たる計算だ。
 現在、東京などでは免疫回避力が高いとされる新変異株「JN・1」が広がる。愛知県の大村秀章知事は17日に「第10波に入ったと言わざるを得ない」との認識を示した。札医大医学部の横田伸一教授(微生物学)も、道内を含む全国の状況について「第10波入りは間違いない」とみる。
 今冬はさっぽろ雪まつり(2月4~11日)などのイベントも感染対策の制限を設けずに開かれる。2、3月は例年インフルエンザB型の患者が増える時期で、同時流行による医療機関の逼迫(ひっぱく)を懸念する声が強い。横田教授は「必要に応じてマスク着用や手洗いを心がけてほしい」と、新型コロナとインフルエンザに共通の感染対策を呼び掛ける。
 横田教授は、今後も新型コロナは一定の周期で感染の波を繰り返すと指摘。その上で「多くの人が感染し、ワクチン接種が進み、集団免疫もできて、社会が『当たり前の感染症』として受け入れることができた」と話す。重症化リスクが高い人がいる病院や高齢者施設では各施設のルールを順守するなど、状況に合わせた対応が必要という。
 感染後の後遺症など未解決の課題も多い。円山ため小児科の多米院長は「新型コロナはウイルスが形を変えて残り、なくなることはないだろう。正しい情報を共有し、上手に共存することが大事だ」と語る。(岩本進、久保耕平)

2024年1月27日 17:32(1月28日 9:38更新)北海道新聞どうしん電子版より転載