たんの吸引や人工呼吸などが必要な「医療的ケア児」に関し、相談対応や関係機関との連絡調整を担う道の支援センターに、保護者や自治体担当者から相談が相次いでいる。「受け入れ先の保育所がない」「どうケアすれば良いのか」―。センター開設以来、1年半余りで計千件に上り、看護師や市町村の相談担当者が不足している実態が浮き彫りになった形だ。

 ケア児は自力呼吸や食事が難しく、医療的な介助が日常的に必要な18歳未満の子ども。全国で推計約2万人で、道内には約700人いる。親が相談先を見つけにくかったり、窓口でたらい回しにされたりすることがあるとされる。

 道は2022年6月、21年施行の医療的ケア児支援法を機に「北海道医療的ケア児等支援センター」を開設。道内唯一のワンストップ窓口で相談や関係機関との調整、人材育成を担う。

 同センターによると、相談は多い時で月80人から寄せられる。進学相談などが4割と最多で、保育関係が3割弱を占める。保護者からは「保育所に預けたいが難しそう」「短期入所施設を探してほしい」などの相談が多く、学校や自治体からは受け入れへの不安が寄せられる。いずれもケアを行う人手不足が要因だ。

 医療的ケアは看護師ら有資格者や保護者でなければできない。昨年12月末現在、看護師配置済みの保育所は札幌や旭川、帯広など16市町の19施設のみ。道が21年度に実施した調査では、保育を必要とするケア児(札幌を除く)の約7割が実際には保育所に入れなかった。同じく受け入れ可能な障害児通所施設は、保育所より預かり時間が短い。

 自治体も人材不足だ。地域で保護者らの相談に応じる専門職「医療的ケア児等コーディネーター」は昨年末時点で、ケア児が暮らす道内82市町村のうち26市町村で不在。「人員を工面できない」などを理由に、道の研修に職員を派遣しない市町村もあるという。

 同センターの運営を受託する医療法人稲生会(札幌)の土畠智幸理事長(46)は、看護師配置費の補助などで「まずは人材確保を早急に進める必要がある」と強調。その上で「医療専門職にこだわらず、保育士や教員向けの医療的ケアの研修を充実させないといけない」とみる。

 北海道医療的ケア児者家族の会「Team Dosanco」の小山内淳子代表(47)は「預けられる保育所が見つからず、子どもに付き添わなければならなくなり、フルタイムなど希望するように働けない親は多い。相談や支援を受けられる体制を整えてほしい」と話す。(久保耕平)

稲生会の短期入所施設で医療的ケア児を介助する看護師ら(稲生会提供)

2024年1月15日 18:49(1月16日 17:47更新)北海道新聞どうしん電子版より転載