能登半島地震の被災地では、厳しい寒さや降雪が被害の拡大や支援の遅れにつながっている。札幌市では冬に月寒断層を震源とするマグニチュード7・2の直下型地震が発生した場合に最も深刻な被害があると想定し、凍死などで夏の13倍となる4千人以上の死者が出ると試算。市は避難所の防寒用品の備蓄を進めるが不足しており、災害時には支援が届くまでに時間がかかる可能性があるため、一般家庭でも寒さ対策を進めるよう呼びかけている。

■各家庭で自衛策必要
 市の2021年の地震被害想定によると、月寒断層を震源とする地震が冬の午後6時に発生すると、建物被害は揺れによる全壊1万3466棟、出火炎上が60件で延焼焼失は886棟、凍死者を含めた死者は最大で4847人。夏の正午に発生すると、建物被害は全壊6965棟、死者数は363人となっている。
 市は冬の被害が拡大する理由について、屋根に積もった雪の重みで建物が倒壊しやすくなり、閉じ込められる人が増えるほか、暖房器具などからの火災も多くなるとみている。
 市危機管理課の三好俊也防災推進担当課長は「積雪時は悪路の上、火災や建物倒壊が増える。救助要請が殺到し、発生当日に救助されず凍死のリスクが高まる」と話す。

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冬の避難者想定(発生1日後)は、14万9853人。胆振東部地震後、市は学校施設などの指定避難所306カ所に電池式灯油ストーブ計1800台を導入。また、避難所の床下からの冷気を防げるよう、折り畳み式ベッドを本年度末までに約1万台導入するなど防寒対策を強化するが、避難者全員分には満たない。
 能登半島地震では津波の発生や道路の陥没、土砂崩れなどで多数の集落が孤立。余震や降雪も続き、救助や支援物資が届くまでに時間がかかっている。
 元市消防職員で、東日本大震災では被災地で被害調査を行った札幌市民防災センター長の千葉正志さん(65)は、「避難所で防寒用のアルミ製カッパやポンチョにくるまると暖かい。スキーウェアやブランケットを玄関に置いておくだけでもいい。重荷にならない程度の防災リュックを用意し、各自が必要な備えを考えてほしい」と訴える。(蒲生美緒)

 

2024年1月15日 22:01北海道新聞どうしん電子版より転載