13、14日に行われる大学入学共通テストを皮切りに、受験シーズンが本格化する。女子受験生の中には、月経前や月経中の腹痛や頭痛、眠気などによる受験への影響を懸念する人もいる。全力を出し切るにはどうすれば良いのか。専門家は「痛みは我慢せず、早めに薬を飲んで。日常生活に支障がある場合は受診を」と呼びかけている。

 「月経前と受験が重なり、試験中にうたた寝してしまった」。小中高生向けの性教育を行う任意団体「ソイル」代表の宮坂舞花さん(25)=上川管内東川町=は、7年前の大学入試センター試験(現在の大学入学共通テスト)を振り返る。

 志望校には無事合格したものの、当時は1カ月の半分は月経前の強い眠気や気分の落ち込み、月経中の腹痛や腰痛に悩まされていた。今は「低用量ピル」を飲んで症状が軽減したが「女子にとって月経は受験勉強にも受験にもハンディになると感じた」と話す。

 月経予測などの健康管理サービス「ルナルナ」を提供するエムティーアイ(東京)が2021年に実施したアンケートによると、受験と月経が重なった、または重なりそうになった10代以上の女性1197人のうち、85・1%が「不安があった」と答えた。

 月経と受験が重なった時にとった対策は「夜用など、長時間使用できるナプキンをして行った」が68・9%が最多で、「生理用品を多めに持参した」が66・0%などが続く。大変だったこと(自由回答)では「試験中に生理がきて、結果も散々だった」「試験中に寝たり倒れたりするのではと不安だった」など切実な声が相次いだ。

 受験への影響を減らすにはどうすれば良いのか。日本女性医学学会専門医で、NTT東日本札幌病院産婦人科部長の寺本瑞絵さん(49)は、直前でもできる対策として「会場に痛み止めを持って行き、おなかが痛くなりそうな時は早めに飲んで」と呼びかける。婦人科を受診すると、子宮の収縮を抑えて腹痛を和らげる薬を処方してもらえる場合もある。

 10代は月経周期が不安定なため、生理用ナプキンを持参すると安心だ。締め付けが少ない慣れた下着を身に着け、腰回りは温めよう。温かい飲み物を用意し、腰回りをマッサージするなどしてリラックスすることも、痛みなどの軽減につながりやすい。

 次の月経まで1週間以上ある場合は、「中用量ピル」を服用することで月経を通常より後ろにずらすことができる。早めにくるよう調整するには、その前の月経中から飲み始める必要がある。費用は診察代込みで1回3千~4千円ほど(保険適用外)。中学生も服用できるが、むくみや腹部の張りなどの副作用が出る場合もある。

 月経前の頭痛やおなかの張りといった月経前症候群(PMS)や月経中の腹痛などがつらい場合は、低用量ピルも効果的だ。3カ月ほどはむくみや吐き気などの副作用が出ることがあるため、受験直前の対策にはならないものの、長期的にみると心身の負担を減らすことにつながる。保険適用で、費用は初診の場合、診察料など含めて1カ月千円台から。

 寺本さんは「楽になれる方法はたくさんある。日常生活に支障があるほどつらい場合は疾患が隠れていることがあるので、婦人科を受診してほしい」と呼びかけている。(尾張めぐみ)

■公立高入試の追試対象に診断書不要

 北海道教育委員会は、3月の公立高入試の追試の対象として、月経や月経に伴う体調不良により欠席した場合も対象とするよう、昨年12月に全道の公立高と中学校などに通知した。

 文部科学省の通知を受けた措置。学力向上推進課は「明示したことで痛みなどを我慢している人の心理的負担が軽減され、休んでも差し支えないと思えるのでは」としている。

 同課によると、これまでも入学者選抜の実施要項で、インフルエンザなどの感染症のほか、耐えがたい体調不良などやむを得ない事情で欠席した場合は、追試を認めていた。月経を理由とした事例が実際にあったかどうかは不明だが、同課は「本人が言いにくい可能性もあるため、含まれていたかもしれない」としている。

 公立高入試は3月5日、追試は3月13日に行われる。5日の試験を欠席した場合、6日までに中学校を通して出願先の高校長に「追検査受検願」を提出、承認されると追試が受けられる。医師の診断書は必要ない。(尾張めぐみ)

<ことば>低用量ピルと中用量ピル いずれも女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲスチン)を成分に含む。中用量ピルは低用量ピルよりもエストロゲンの含有量が多く、月経移動のように短期間に内服する場合に使われることが多い。低用量ピルは長期的な月経のコントロールや、重い月経痛などの月経困難症、頭痛やおなかの張り、イライラなどの月経前症候群(PMS)の治療、子宮内膜症の治療や予防などに用いられる。避妊用として自費診療で処方される場合もある。

2024年1月9日 05:00北海道新聞どうしん電子版より転載