准看護師を養成する専門学校が道内で激減している。高度医療への対応を目的に日本看護協会が准看護師の養成停止を求めていることなどが理由で、学生を一般募集する学校は2017年度に道内に9校あったが函館や帯広、小樽などの閉校や閉科により24年度入学は岩見沢、深川、旭川の3校のみになった。看護師不足が続く中、准看護師養成校は近年、第二のキャリアとして転職を目指す社会人の受け皿にもなっており、医療関係者は「地域医療の担い手がさらに減る」と危機感を強めている。

 

「高校卒業から20年以上たっていることもあり、受験科目が中学卒業程度の国語と数学のみということにも後押しされた」。准看護師を養成する岩見沢市医師会付属看護高等専修学校(定員40人)で学ぶ1年の木菱彩(あやか)さん(43)=札幌市=は同校を選んだ理由を語る。もとは幼稚園教諭。同じく幼稚園教諭から看護師になった知人に勧められ、漠然と憧れていた看護職への転身を決断した。

 准看護師は医師や歯科医師、看護師の指示を受けて業務を行う。看護師養成校は高校卒業程度の知識が必要で受験科目も多いのに対し、准看護師は中学卒業程度で比較的入りやすい。看護師より1、2年短い2年間で卒業し、早く就職できる利点もある。

教官(左)が見守る中、血圧や体温測定などの実習に取り組む岩見沢市医師会付属看護高等専修学校の学生たち=11月6日

 

このため転職を目指す社会人が多く、同校の今春の入学生は平均年齢34歳。准看護師養成校がない札幌や北広島などから通う人も多い。幼い頃からの夢が看護師だったという1年の永田あかねさん(46)=札幌市=もその一人で、約20年続けた生命保険の営業職を辞めて入学し「訪問看護に携わりたい」と大学生2人と高校生1人の子を育てながら学ぶ。

 ただ、日本看護協会は准看護師養成を廃止し、看護師養成への一本化を進める。医療の高度化で「自律的な判断能力がより求められている」ためだ。日本医師会(日医)の調査では准看護師養成校の全国の応募者数は18年度の約1万1500人から23年度は約5千人に半減し、約9割で定員割れした。少子化やキャリアアップ志向も背景にある。

 現在、道内の准看護師養成校は一般募集しない自衛隊の学校を除くと岩見沢のほか、旭川市医師会看護専門学校(定員80人)と深川医師会付属准看護学院(同28人)だけ。旭川と深川は今春定員割れした。今春の入学生が49人と定員の約6割だった旭川の看護専門学校は24年度入学生から定員を40人に半減し「社会人入学を増やすなどして維持させたい」とする。

 応募は減っても地域医療への貢献は大きい。岩見沢市医師会の7月の調査によると、中核病院を除く、診療所など市内の中小の医療機関で働く看護師と准看護師約400人のうち少なくとも約半数が岩見沢の准看護師養成校の卒業生だった。深川の准看護学院も「卒業生の2、3割が市内に就職し、地域医療に欠かせない存在」と強調する。

 日医は「高度で専門的な医療だけでなく、地域に密着した診療所・中小病院や高齢者の療養を支える看護職も重要。准看護師養成所は社会人から看護職を志す道としての役割もある」と養成の継続を求める。岩見沢市医師会の得地史郎(ふみお)会長も「准看護師養成校がなくなれば間違いなく地域医療は崩壊する」と訴える。

 岩見沢では養成校を維持するため、講義は同市医師会の医師らが低額の有償ボランティアで行っている。得地会長は「岩見沢に就職する卒業生を1人でも多く確保すべく、何としても養成校を継続させる」と語る。(高木緑)

<ことば>准看護師制度 戦後、病院が急増し、看護師の需要が高くなる中、中学卒業の条件で看護師らを補助する資格として始まった。看護師は国家資格であるのに対し、准看護師は都道府県免許。厚生労働省によると、2020年現在、看護師132万人、准看護師30万5千人が働いている。

 

2023年12月28日 21:34(12月28日 23:32更新)北海道新聞どうしん電子版より転載