イスラエルの軍事侵攻が続くパレスチナ自治区ガザで長く医療活動を行ってきた札幌の医師猫塚義夫さん(76)が現地の情勢を伝える講演会が、旭川市民文化会館で開かれた。猫塚さんは「私たち一人一人が行動を起こすことで、1人でも多くのガザの人々の命を救える」と呼びかけた。

 まちなかぶんか小屋スタッフ竹田郁さん(40)ら、有志の市民が主催し、21日に開催。猫塚さんは「北海道パレスチナ医療奉仕団」の団長として2011年からガザを訪れ、困窮する人々に診療を続けてきた。

 講演会ではガザやヨルダン川西岸地区に住む知人から日々送られる、空爆でがれきの下敷きになった住民たちの映像を見せながら、「イスラエルが壁やフェンスを築き完全封鎖状態にあるガザの人々は逃げる場所もないまま攻撃にさらされている」と訴えた。

 パレスチナ自治区の成り立ちやガザで16年間続く封鎖の影響についても解説した。「人や物の出入りの制限で産業が衰退し、失業や貧困が深刻。希望を見いだせず、若年層での麻薬のまん延や自殺も増加している」。軍事侵攻の発端となった攻撃を行ったイスラム組織ハマスが自治区で貧困層の生活支援を担っていることにも触れ、「攻撃は許されないことだが、ハマスを悪と切り捨てられないガザの現実を知ってほしい」と語りかけた。

 講演会には46人が参加。旭川の洋裁業大江純子さん(74)は「私たちが停戦を訴えることでガザの人が少しでも救われるかもしれないという言葉が印象に残った。できることを探したい」と受けとめていた。(菅沢由佳子)

ガザの現状や歴史について講演した猫塚義夫医師

2023年12月25日 21:28北海道新聞どうしん電子版より転載