藤原里佐、田中智子ら編著

「看取る権利」を問う

 編著者の一人、北星学園短大の藤原里佐教授は障害者福祉の研究者だ。愛知県の障害者施設の利用者、家族、職員へのアンケートなどから、高齢の利用者や家族の生活実態と課題を読み解いた。

 浮かび上がったのは、障害者の家族が老いてもなお、ケアの役割を過重に担っているという現状だ。例えば、自宅で両親と3人で暮らしていた知的障害の男性。20年前に母親が亡くなると、当時60代の父親のケアには限界があり、食事は菓子やカップ麺になり部屋は汚れた。ヘルパーが父子を支えたが、父親が80歳を超えると、60代の男性自身も体調を崩し、昨年、グループホームに入居した。

 高齢の家族と施設で暮らす障害者が互いに訪問・宿泊し合ってゆっくり過ごそうとしても、支援制度は乏しい。親の看取(みと)りや墓守を支える仕組みもないとして、障害者が家族を「看取る権利」を確立させるよう本書は訴える。(中村康利)

クリエイツかもがわ 2420円

2023年12月3日 05:00北海道新聞どうしん電子版より転載