福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」の現地代表で、アフガニスタンなどで人道支援に尽力した医師中村哲さん=当時(73)=が凶弾に倒れてから4日で4年となる。母校・福岡高の卒業生らでつくる「ペシャライト」は、その生涯を交流サイト(SNS)で発信している。目の前の命に向き合った生きざまを同世代に伝え、「誰かが一歩を踏み出す勇気につなげたい」と考えている。

 「ペシャライト」メンバーは東京、京都、福岡の大学生や高校生ら6人。アフガンで干ばつ被害を目の当たりにした中村さんが、用水路を造り、農業を復興させた軌跡を写真やイラストを交えて紹介。アフガンの食事や衣服など文化についても解説している。

 発起人で九州大1年の辺見紗来さん(19)=福岡市=は福岡高出身。高2の時、「先輩の志を受け継ぎたい」と考え、生徒会に有志の「ペシャワール班」を結成した。用水路事業についてまとめ文化祭で展示したり、生前の中村さんの講演内容を冊子にして全校生徒に配ったりしてきた。

 共感の輪を広げようと同世代に呼びかけ、始まったのがペシャライトだ。「ライト」は、「自分の居る場所で最善を尽くす」を意味し、中村さんが好んだとされる「一隅を照らす」にちなむ。

 辺見さんは「中村先生は大きなことを成し遂げようとしたわけではなく、『自分のできることをやる』という謙虚な姿勢で活動に取り組んでいた」とみる。その考え方に学び、実践することで「社会はもう少し明るくなるはず」と力を込める。

 中村さんの死去から4年を前にした3日夜、元現地ワーカーらを招き、中村さんの歩みを振り返り、紛争や貧困に苦しむ人々のためにできることを議論するオンラインイベントを開催した。

 2003年から用水路建設に携わった男性は「自然を大切にし、人とのつながりを見つめ直そうというのが、中村医師のメッセージだった」と振り返った。メンバーの大学3年高林木綿子さん(21)は「中村さんの言葉を学ぶことの意義を感じた」と話した。

アフガニスタンのガンベリ砂漠の岩山に立ち、用水路工事の陣頭指揮を執る中村哲さん=2008年6月(共同)

2023年12月3日 21:48北海道新聞どうしん電子版より転載