9月末に閉店した鳥取県若桜町で唯一のスーパーだったJA鳥取いなば系の「トスク若桜店」の店舗に28日、新たなスーパーとして「エスマートわかさ店」がオープンした。開店を待ちわびていた住民らが大勢訪れ、一様に安堵(あんど)の声が聞かれた。

新たにオープンした「エスマートわかさ店」=2023年11月28日、鳥取県若桜町若桜、大久保直樹撮影

 わかさ店の土地と建物は若桜町が借り上げ、エスマート(鳥取市)が店舗を改修。一部の旧トスク従業員も含めて15人を雇用した。新店舗では地域の景観に配慮し、茶色を基調とした看板にし、店内では生鮮食品や冷凍食品のほか、店内で調理した総菜や弁当も販売している。

大勢の買い物客でにぎわう「エスマートわかさ店」=2023年11月28日、鳥取県若桜町若桜、大久保直樹撮影

 

この日午前9時、店舗入り口前で、大石和也店長が「みなさまの食生活の支えになっていけたらと考えております。ただいまよりオープンいたします」と開店を宣言。大勢の買い物客らが入店し、生鮮食品などを買い求めていた。

 近くに住む山口正一さん(74)は「閉店すると聞いたときはみんな本当に不安だった。新しい店は総菜などもたくさんあって最高だ。これからの若い世代が住んでいくためにもありがたい」。自転車で訪れ、冷凍食品や総菜などを購入した谷口可恵(よしえ)さん(71)は「揚げ物だけでもたくさん種類があり、どれを買えばいいか迷うぐらい。これから毎日来るのが楽しみだ」と満足そうだった。

 町は買い物バスの運行や「公設民営」による店舗承継の支援に取り組んできた。上川元張町長も駆けつけ、「待ちに待った開店の日を迎えることができた。町民と喜びを分かち合いたい」と笑顔で話した。

 エスマートの寺谷淳社長は報道陣に対し、県や町、JA、業者の協力に謝意を示し、「町民のみなさんから『いつだ、いつだ』という声が多かったが、何とかオープンできた。若桜町の台所としてがんばっていきたい」と決意を語った。

 県内のトスクをめぐっては、経営難を理由に9月末までに全9店が閉店。そのうち、若桜店とちづ店(智頭町)の2店については、11月下旬までにエスマートとJA側が承継を巡る交渉で合意。ちづ店の後継店は12月中旬ごろのオープンを予定する。

 県によると、トスクのほかの旧店舗のうち、用瀬店(鳥取市)と丹比店(八頭町)についても複数の企業が交渉を続けている。(大久保直樹)

朝日新聞デジタルより転載 1時間前 2023/11/29