札幌市東区の市立小学校の特別支援学級で、男性教諭による不適切な言動で児童が相次いで不登校となっていると保護者が訴えている問題で、この男性教諭の前任校だった別の東区の小学校でも、亡くなった同僚の女性教諭が「男性教諭が児童に不適切な指導をしている」と生前に札幌市教委に相談していたことが26日、分かった。

 女性教諭は男性教諭からの言動などがストレスとなり、うつ病と診断され、今年5月に自殺した。

 遺族によると、女性教諭は2018年4月から、男性教諭とともに特別支援学級を担当。着任後、「男性教諭が児童の椅子を蹴ったり、児童を厳しく叱ったりする様子を目にした」と家族や周囲に話すようになった。遺族は「(女性教諭は)男性教諭の指導について『児童がかわいそう』と話していた」と明かす。

 女性教諭は19年3月、市教委に電話で相談。「児童が長期休業中に作った作品を破ったり壊したりしている」「子供の机や椅子を蹴るために、他の子供たちが学習に集中できなくなることがあった」などと訴え、「学校の管理職にも相談したが、論点をはぐらかされた。不信感を抱いている」と話した。

 遺族は「(女性教諭が)男性教諭の指導を不適切だと学校側に訴えた後、男性教諭が(女性教諭に)批判的な言動を繰り返すようになった」と訴える。

 北海道新聞の取材に対し、市教委は女性教諭から男性教諭の指導について相談があったと認めたが、「個別の案件について話すことは控える」としている。

 当時の校長は不適切な指導については「承知していない」、教頭は「少し厳しい指導はあったかもしれないが、(不適切な指導は)なかったと思う」とそれぞれ話した。

 男性教諭は児童の作品を破るなどの行為の有無について「覚えていない」としている。

 この男性教諭に関しては、現在勤務する小学校で椅子を蹴るなどの不適切な指導により児童が不登校になったと訴える保護者が調査を求め、市教委が事実関係を調べている。(麻植文佳、大城道雄)

2023年11月27日 05:00北海道新聞どうしん電子版より転載

 

・札幌市立小教諭「パワハラ原因で自殺」 不適切言動問題の元同僚から 遺族、市教委に調査要求

札幌市東区の市立小学校で特別支援学級を担当していた女性教諭=当時(43)=が、同僚の男性教諭の言動に悩んで2018年にうつ病を発症し、治療中だった今年5月に自殺していたことが25日、分かった。遺族は「男性教諭から受けたパワーハラスメントが自殺の原因」と訴えており、札幌市教委に対し、パワハラの有無や自殺との因果関係を調べるよう求めている。

 女性教諭は18年4月から21年3月まで東区の小学校に勤務。遺族によると、着任後に心身の不調を訴えるようになり、精神科でうつ病と診断された。女性教諭は遺族に「男性教諭から、児童の前で『ばか野郎』『逃げるのか』などと叱責(しっせき)された」と訴えていたという。

 遺族が女性教諭の通院先の精神科から取り寄せたカルテや診断書には「(男性教諭が)いじめやハラスメントを行ったため、ストレスを受けうつ状態に陥った」と書かれていた。

 女性教諭は学校の管理職に「男性教諭からパワハラを受けている」と訴え、19年3月には市教委にも電話で相談。男性教諭は19年4月に別の小学校に異動したが、その後も女性教諭のうつ病は改善せず、一時休職し、入院した。21年4月に札幌市中央区の市立小学校に異動した後も通院を続け、在職中の今年5月、自宅で自ら命を絶った。

 北海道新聞の取材に対し、市教委は「女性から『パワハラの調査をしてほしい』という積極的な申し出はなかったため、調査しなかった」と答えた。遺族が求める今後の調査についても「男性教諭から具体的にいつ、どこで、どのような言動を受けたかを示す資料が足りない。このままでは調査できない」としている。

 当時の校長と教頭はともに、男性教諭本人や同僚教諭らに聞き取り調査した結果として、「厳しい言葉づかいはあったので指導をした」としたが、「パワハラに当たるような言動はなかった」と話した。

 男性教諭は取材に、女性教諭に怒鳴るなど不適切な言動はなかったと否定、「彼女もいろいろな課題を抱え、私たちも彼女との関係に悩んでいた」としている。

 男性教諭に関しては、その後異動した同市東区の別の小学校の特別支援学級で「不適切な言動による児童の不登校が相次いでいる」と複数の保護者が訴えている問題が発生、市教委が事実関係を調べている。(麻植文佳)

2023年11月26日 05:00(11月26日 08:39更新)北海道新聞どうしん電子版より転載

 

・札幌の市立小教諭自殺「仕事好きな娘がなぜ」 母親、真相解明願う

 札幌市東区の市立小学校で特別支援学級を担当していた女性教諭が今年5月に自殺し、遺族が「男性教諭から受けたパワハラが原因」と訴えている問題。北海道新聞の取材に応じた女性教諭の母親は「娘は教師の仕事が好きだった。なぜこんなことになったのか」と真相解明を願っている。

遺族によると、女性教諭は道教大旭川校を卒業後、胆振管内や札幌市内の複数の公立小中学校で教員として勤務。2018年4月に札幌市東区の市立小学校の特別支援学級で働き始めた後、母親との電話で「男性教諭が怖くて、教室に入るだけで心臓がばくばくして足が震える」と泣きながら話すようになったという。

 19年3月に市教委に電話で相談した際には「『やる気があるのかないのか』と怒鳴られ、つるし上げにあったように感じた」と訴えていた。

 女性教諭が亡くなった後、遺品の中から、男性教諭とみられる人物との間で交わされた無料通信アプリLINE(ライン)のやりとりが残されたタブレット端末が見つかった。担当教諭間のグループトークで病院に行くと伝えた女性教諭に対し男性教諭が「ただ後ろめたくて休みたいだけでしょ?」「このまま逃げるの」と投稿。女性が「心が限界なんです。生きるのがつらいんです」と訴えるやりとりも残されていた。

 遺族はパワハラの有無などの調査を求めている。市教委の担当者は追加の資料の提供を繰り返し要求しており、遺族は「既にカルテなどを提供したのに、これ以上何を出せばいいのか。事実関係を明らかにしてほしい」と話している。(大城道雄)

2023年11月26日 05:00(11月26日 08:36更新)北海道新聞どうしん電子版より転載