少子化に伴い私大経営が厳しさを増している。入学者が定員割れした私大は全体の半数を超えた。
私大は生き残りに懸命だ。北海道医療大(石狩管内当別町)が、通学の利便性の良さから北広島市の「北海道ボールパークFビレッジ」(BP)に移転を決めたこともその表れだろう。
今後も18歳人口の減少が避けられない中、私大は地域での役割や存在意義を明確にすることが一層重要になる。大学側と自治体が住民も巻き込んで知恵を絞り、存続策を模索する必要がある。
日本私立学校振興・共済事業団の調査によると今春、入学者が定員割れした四年制私大は全体の53%だった。半数超えは1989年度の調査開始以来、初めてだ。
国内の18歳人口は過去30年で4割以上減った。一方、私大は国の規制緩和で新規参入が加速したことなどから、全大学の7割超の約620校まで増えた。
気がかりなのは、定員割れが地方の小規模私大で目立つことだ。事業団の調査によると私大の定員充足率は三大都市圏の大規模校が103%なのに対し、その他の地域の小規模校は90%だった。
地方の私大は経済的な事情で都市部に進学できない若者に高等教育の機会を提供し、地域で活躍する人材を育てる機能も持つ。
こうした私大がなくなれば若者の受け皿が失われる。ひいては地域の衰退につながる。自治体にとっても死活問題だ。
少子化時代だからこそ必要とされる私大像を地域全体で探り、オンリーワンの特色を打ち出して学生獲得につなげてほしい。
道内では、技能や教養を身につける「学び直し」を望む社会人を受け入れる動きが広がっている。
さらに学生が商店街組合や町内会と積極的に交流し、空き店舗でイベントを開くなど地域課題の解決に取り組む大学もある。
住民にとって学生は地域を活性化してくれる貴重な存在だ。一方、学生は地元の産業や医療福祉、教育などの実情を現場で学ぶことができる。得られた経験は卒業後、役に立つことだろう。
少子化を踏まえ文部科学省は、国公立大を含む大学間の連携強化や統合・再編の促進策などを中教審に諮問した。
焦点の一つが年3千億円に及ぶ国の私学助成金のあり方だ。今は主に学生数に応じて配分が決められるが、地域振興への貢献度が認められれば助成額を加算する仕組みも検討してもらいたい。
2023年10月19日 05:00北海道新聞どうしん電子版より転載