長崎県対馬市の比田勝(ひたかつ)尚喜市長は27日の市議会本会議で、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査について、調査を受け入れない考えを明らかにした。市議会は調査受け入れを求める請願を賛成多数で採択していたが、異なる結論を出した。

 比田勝市長は受け入れないと判断した理由について「市民の合意形成が不十分だ」と述べた。比田勝市長は27日午後に同市内で記者会見を開き、詳細を説明する。

 文献調査は3段階ある処分場選定プロセスの第1段階。後志管内寿都町と神恵内村で2020年11月に調査が始まって以降、道外で初めて調査受け入れに向けた具体的な動きが対馬市で出ていたが、比田勝市長が受け入れを拒否したことにより同市での実施は困難となる。

 対馬市では今年6月、建設業団体や市商工会が文献調査の受け入れや議論・検討を求める請願を市議会に提出。市議会は今月12日に賛成多数で請願を採択したが、賛成10人、反対8人と僅差だった。調査受け入れの可否を最終的に決めるのは比田勝市長で、その判断が注目されていた。

 現在2期目の比田勝市長は20年の前回市長選時、処分場は誘致しない姿勢を演説で示し、誘致を訴えた新人候補を破って再選。今年に入ってからも文献調査について「調査を受け入れてから、お金(交付金)だけをもらうという考えはない」「議会の判断と私の判断は一緒にならないこともあり得る」と会見で述べるなど、受け入れに慎重な発言を続けていた。(山田一輝)

2023年9月27日 12:21(9月27日 16:43更新)北海道新聞どうしん電子版より転載