千葉大発ベンチャー企業「Smart(スマート)119」(千葉市)と札幌圏の11市町村は、救急搬送時間の短縮に向けた実証実験に取り組む。昨年、同社と札幌市が行った実証実験を拡大。タブレット端末で傷病者の状態を迅速に病院に伝えて搬送先を決めるまでの時間短縮を目指すほか、人工知能(AI)で搬送業務の効率化を図る。

 患者の搬送先の決定を巡っては現在、救急隊が傷病者の意識状態や脈拍、血圧などをチェックし、病院に電話で受け入れを要請。受け入れを断られると同じ説明を繰り返す必要があり、病院が決定するまでの現場滞在時間が長くなる傾向がある。

 実証実験では、複数の病院にタブレット端末を配置し、救急隊が傷病者の状態を入力して病院側と情報を共有することで迅速な搬送を目指す。札幌市との実験では、現場滞在時間が従来の20分以上から、6分程度に短縮された例があったという。

 このほか、Smart社が開発したAIに救急出動の実績や将来の人口予測などを学習させた上で、救急需要の予測を立て、救急車の配置案などを検討。119番の入電から救急車が現場に到着までの時間をどれほど短縮できるかを分析する。

 今回は11市町村のうち江別市が6月からこれらの実証実験を行う。今後は、小樽、千歳、岩見沢、石狩などの各市と順次、実施する運びで、実施に向け協議中の自治体もある。江別市消防本部は「どこを改善すると時間短縮につながるのか、正確なデータに基づいて考えたい」と期待。Smart社は「実証実験で救急車の効率的な配置のヒントにしたい」としている。

 札幌市と周辺の11市町村は2020年度から、各自治体が抱える課題をスタートアップやベンチャーのノウハウで解決を目指す実証事業を行っている。採択事業数は21年度まで3~4件だったが、22年度決定の事業は同社など11件と大幅に増え、自治体とスタートアップなどとの連携機運が高まっている。(土田修三)

2023年5月18日 18:18(5月19日 11:49更新)北海道新聞どうしん電子版より転載