若年層のがん患者らが卵子や精子を凍結保存し、妊娠するための生殖能力を残す「妊よう性温存療法」の指定医療機関は道内に7カ所あり、札幌以外では旭川医科大学病院だけだ。保険適用外だが、要件を満たせば道の助成を受けられる。同病院の生殖医療専門医、水無瀬(みなせ)学医師は「患者にも腫瘍専門医にも妊よう性温存療法を知ってもらい、選択肢として広がってほしい」と話す。

 がん患者は抗がん剤や放射線治療により、生殖機能が低下する恐れがある。がん治療前に、妊よう性温存療法で卵子や精子を保存すれば、将来的に妊娠できる可能性がある。自己免疫疾患の一部も対象。ただし、がんなど元の病気の治療を最優先に行うのが原則だ。

 旭医大病院は本年度から本格的に妊よう性温存療法始めた。現在実施可能なのは、《1》精子凍結《2》精巣内精子採取による精子凍結。設備が整う来年2月からは、卵子を凍結する《3》受精卵凍結《4》未受精卵子凍結―ができるようになる。このほか卵巣組織凍結があるが、同病院では実施していない。

 指定医療機関で治療を受けた場合、道に申請することで、精子凍結で2万5千円、精巣内の精子凍結で35万円、受精卵凍結で35万円、未受精卵子凍結で20万円、卵巣組織凍結で40万円を上限に助成を受けられる。43歳未満、道内在住、臨床研究への情報提供に同意できる、といった要件を満たす必要がある。

 道地域保健課がん対策係によると、本年度は道内でこれまでに15人が助成を申請。未受精卵子の凍結は治療費28万円ほどで、一部自己負担があったが、ほかは、ほぼ助成額の範囲内で収まっているという。

 旭医大病院では本年度、精子凍結を3人に行った。卵子凍結も問い合わせがあるという。妊よう性温存療法について、水無瀬医師は「腫瘍専門医と、がん治療までの時間的な猶予などを互いに話し合った上で検討する」と説明。患者に対しては「主治医とよく相談して」と呼び掛ける。また、がん治療と生殖医療を経験する患者が安心して臨めるよう、看護師や臨床心理士などのチームをつくり、スタッフの充実を図っていきたいとしている。

 妊よう性温存療法の助成制度などの問い合わせは、道地域保健課がん対策係、電話011・204・5117へ。(桜井則彦)

12/20 00:36 更新 北海道新聞どうしん電子版より転載