思春期に進行しやすい背骨が異常に曲がる病気「脊柱側彎(そくわん)症」の発見を支援する測定機器を、旭川医科大整形外科学講座の研究班が開発し、普及を進めている。独自のソフトウエアを組み込んだ携帯端末の傾斜測定機能を活用。測定器のローラーで背中をなぞるだけで短時間で調べられる。既に旭川市内の小学校3校で使われ、同研究班は貸出先をさらに募っている。

 脊柱側彎症は女子に多く発症する。頻度は軽症を含め子どもの100人に2~3人ほど。湾曲が進むと体幹のゆがみが外見に影響し、極度に進行すると心肺機能の低下を伴う。進行を防ぐ装具治療があるが、湾曲が強くなると手術が必要な場合もある。

 早期の発見・治療のため研究班は、腰から背中の傾斜を容易に数値化できる測定器を熱田裕司客員教授が考案。今井充、今井篤の両システムエンジニアが開発した。

 測定器は、傾きを感知するセンサーを持つ携帯端末にローラーを取り付けている。前屈した子どもの背中から首方向にローラーを転がすと、端末の画面に左右の最大傾斜角などの数値が示される。基準値以上の場合に、学校医が精査し、専門医の受診が必要か判断する。医師のほか看護師などの使用を想定。測定は1人当たり10秒程度で済むという。

 学校健診には、側彎症を含む脊柱の検査項目が組み込まれていて、視触診が中心。服を脱いでもらい、肩や肩甲骨の高さの左右差と脇線の左右差をチェックし、前屈した状態で背中の片方に隆起(傾斜)がないか判定する。この方法について研究班は「学校医によって判断に差が出ることがある」と指摘する。端末による測定の場合、薄手のシャツなら着衣の上からでも調べられ、今井充さんは「脱衣に抵抗感のある子どもがいても対応できる」と語る。

 旭川市立朝日小の学校医、平沢邦彦さん(平沢循環器・内科クリニック院長)は測定器を導入。「視診に比べても検査時間を3割は短くでき、医師以外が測定しても数値的に同じ結果が出る」と評価する。小原舞紀看護師も「軽くて使いやすく、誰でも使える。子どもたちは服を脱がずに済み、怖がらず受けてくれる」と話している。

 研究班は旭川や近郊の学校に無償で貸し出しを行っている。貸し出しを希望する学校や開発、改良への協力企業などを募っている。問い合わせはsokuwan@asahikawa-med.ac.jpへ。(桜井則彦)

12/09 22:17 北海道新聞どうしん電子版より転載