松本剛明総務相は2日の記者会見で、杉田水脈総務政務官が性的少数者やアイヌ民族を巡る過去の表現について謝罪し、撤回する意向を示したと明らかにした。松本氏の指示に応じた。

 杉田氏は2018年の月刊誌への寄稿で、LGBTなどの性的少数者を「生産性がない」と表現。16年、自身が出席した会議の参加者についてブログに「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」とやゆする投稿をしていた。

12/02 10:49 更新 北海道新聞どうしん電子版より転載

 

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<社説>杉田総務政務官 資質を疑う差別的言動

自民党の杉田水脈(みお)総務政務官がかつて、アイヌ民族を侮辱する内容をブログに投稿していたことが分かった。

 おとといの参院予算委員会で、杉田氏は自身の投稿と認めた。しかし「当時は議員でなく、一般人だった」などと釈明し、謝罪も撤回もしなかった。

 杉田氏はこれまでも、LGBTなど性的少数者に対する差別的な発言や、性被害を受けた女性を蔑視する言動を繰り返してきた。

 岸田文雄首相が掲げる「多様性の尊重」とは、まったく相いれない。政府の要職である政務官としてだけでなく、国会議員としても資質を疑われる。

 首相は杉田氏の更迭を拒否した。だが、このままで職務を続けられるのか。数々の問題発言を知りながら、起用した首相の人権感覚そのものが問われかねない。

 杉田氏は落選中の2016年、自身が参加した国連女性差別撤廃委員会に関し「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」とブログに記した。

 民族衣装をアニメや漫画の登場人物に扮(ふん)する「コスプレ」とやゆするのは、アイヌ民族の歴史と文化への理解を欠いている。

 政府は19年に、アイヌ民族を法律で先住民族と位置づけ、差別を禁じたアイヌ施策推進法(アイヌ新法)を制定した。

 ブログは新法の趣旨を逸脱している。当時の考えを改めていないのであれば、政府や立法府の一員が自ら定めた法律をないがしろにしているに等しい。

 参院予算委では「日本に女性差別というものは存在しない」と発言した14年の衆院内閣委員会の質問も取り上げられた。

 杉田氏は「命に関わるひどい女性差別は存在しないという趣旨だ」と述べたが、詭弁(きべん)でしかない。

 10月には性被害を公表した女性を中傷した複数のツイッター投稿に「いいね」を押して名誉を傷つけたとして、東京高裁が杉田氏に賠償を命じる判決を出した。

 上告したとはいえ、交流サイト(SNS)の誹謗(ひぼう)中傷対策キャンペーンを展開する総務省の政務官にふさわしくない。

 第2次岸田改造内閣では、杉田氏のほかに、性的少数者への差別的な言動が問題となった簗和生(やなかずお)文部科学副大臣が起用されている。

 政権全体で差別を容認しているとの疑念を持たれかねない。首相は、任命理由などを丁寧に説明する責務がある。

12/02 5:00  北海道新聞どうしん電子版より転載