ふるさと納税の寄付総額が3年連続全国4位の釧路管内白糠町に来年3月、ふるさと納税関連企業の大手、シフトプラス(大阪市)の営業所が開設される。町内で準備に奔走する同社参与佐々木康行さん(60)は元同町職員。町を寄付額の全国上位に押し上げた担当チームを指揮してきた。その手腕を生かし、民間で「第二の人生」を歩み始めた佐々木さんに、ふるさと納税を活用した地域づくりへの思いを聞いた。

 ―白糠営業所は、どんな業務を担いますか。

 「シフトプラスは、自治体向けにふるさと納税関連の管理システムを開発し、その運営などを担っています。白糠営業所にはコールセンターを併設し、受託する全国の自治体への寄付者からの問い合わせを受け、返礼品を製造する企業や各自治体と商品開発などの相談もします。常勤50~60人、繁忙期には最大100人の雇用を目指します」

 ―シフトプラスは全国13カ所に営業所があります。なぜ白糠に進出したのですか。

 「ふるさと納税の使い道を子育て支援や漁業振興などと明確に示し、地域づくりに反映させた白糠の姿勢に共感した社長が、地域振興に一役買おうと進出を決めました。私は町職員時代、ふるさと納税は寄付を集めることが目的ではなく、地域活性化のツールと考えていたので大変うれしかったです」

 ―今は、どんな業務をしていますか。

 「営業所開設準備のほか、全国の営業所で職員にふるさと納税制度を解説したり、道内外の自治体向けに関連の講演もしています。自治体には、ふるさと納税推進は委託企業への丸投げではなく、必ず地元を熟知する自治体職員が中心となり、返礼品をつくる事業者含め官民一体で取り組むよう勧めます」

 ―自治体職員が中心になるべきだというのは、なぜですか。

 「白糠の2021年度の寄付総額は125億2200万円ですが、15年度は1億5900万円、全国228位でした。伸びたのは、返礼品の魅力だけが要因ではありません。白糠は、関連業務を複数の民間企業に委託していますが、運営は町職員7人が中心です。専用サイトに返礼品への感想コメントが投稿されると職員が必ず返信します。『無添加のものはないか』とのコメントを参考に、サーモンを味付けした人気の加工品エンペラーサーモンを作る事業者が、天日塩だけで締めたサーモンを開発したこともあります。町の情報や時季にあう返礼品を紹介するメールマガジンを週1度、職員が配信し、今は16万人の読者がいます。そんな地道な種まきがあったからこそ、伸びたと思っています」

 ―ふるさと納税は、町内の事業者にどんな効果をもたらしてきましたか。

 「町内の関連事業者は約40社。どの社も水産低迷や新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受け、ふるさと納税の伸びに救われました。人気の返礼品『イクラのしょうゆ漬』を製造する水産加工会社は、サンマ不漁に伴う加工量減少対策として、返礼品の包装や宅配センターへの輸送を担う物流部門を創設し雇用確保につなげました。魚介類や羊肉、エゾシカ、チーズなどの地場産食材は返礼品で全国的に認知度が高まり、今後、自力で全国の消費者や飲食店に販路を広げていく布石になったはずです」

 ―今後、伝えていきたいことは。

 「この制度が長く続くには、不正なく、正しく活用していくことが何より大切。それを訴えたいです」(釧路報道部 佐竹直子)

<略歴>ささき・やすゆき 1962年、釧路管内厚岸町生まれ。オホーツク管内清里町を経て小学6年から白糠町に住む。80年に町役場入り。企画財政などを経て2015年からふるさと納税を担当。22年3月に定年退職し、同年4月から現職。

9/5  5:00  北海道新聞どうしん電子版より転載