・男女格差 道内1.25倍ワースト3位
北海道の大学進学率の男女格差が全国で3番目に大きかった背景には、地方に大学が少ないことや経済的問題のほか、性別で役割を分ける意識が残っていることも影響しているようだ。
「男の子は将来の仕事があるから、大学進学は弟に譲ってあげてほしい」。札幌市中央区の女性会社員(35)は18年前の高校3年の夏、両親に言われたこの言葉を今も忘れられない。
空知管内の高校では上位の成績だった。翻訳家を目指し道外の大学を志望していた。家庭の厳しい経済事情は理解していたが、大学進学を諦められず、奨学金制度を調べた。だが、4年間分の返済額の大きさに驚き、断念した。高校卒業後は札幌の短大に進んだ。
卒業後は今の会社に事務職の正社員で就職した。勤続15年で昇給はほとんどなく、手取りは月15万円。「大学に進学していたら就職先も違い、今と別の暮らしがあったのかも」。時々そう思うことがあるという。
石狩管内のある高校では、2021年春の卒業生の大学進学率は男子が40%なのに対し女子は19%。進路指導教諭は「『女子は男子ほど働いて稼がなくていいから無理して大学に行かなくても良いのでは』などという保守的な考えが、親世代にも生徒間にも強いと感じる」と明かす。
大学の少ない地方では、男女ともに進学率が低迷する傾向がある。道の調査では、21年春卒業の女子の大学等進学率は市部51%、郡部25%と倍の差があった。
根室管内中標津高の岡田岳人・進路指導担当教諭(42)は「地元に大学はなく、子どもを進学させると1人暮らしの費用が伴う。道内では地理的な問題も大きく、男女格差が続く原因だろう」とみる。
日本学生支援機構の18年度調査によると、アパートなどに住んで大学に通う際の年間費用(学費と生活費)は平均222万円で、自宅通学より約51万円多かった。岡田教諭は「地方の女子は特に不利な状況におかれることが多い」とみる。
大学進学の有無は女性の生涯賃金や経済的自立にも影響するとされる。札幌大谷大の梶井祥子教授(家族社会学)は「地理的、経済的といった複合的な問題があるが、根本には男女の性別役割などのジェンダーの問題がある。性差に関係なく、子どもが主体的に多様な進路選択ができる環境が求められる」と話した。
3/05 19:47 北海道新聞どうしん電子版より転載