投げ 銭 類似 システム の 法的 考察 貸金決済法 犯罪収益移転防止法 | 白鳥 瞳 でございます。。。

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DeNAなどの投げ銭類似システムすなわちコインなどは厳密には資金決済法違反ですが通常上場企業などはあくどいので普通は簡単には捕まりません またリスナーが投げ銭類似行為をすることは厳密には犯罪収益移転防止法、すなわちマネーロンダリング禁止法違反ですが刑事訴訟法などから考察すると普通は逮捕されません が検察や警察などが別件逮捕などする場合はこの限りではありません 一般論としては企業は大手ほど悪質です

DeNAはかつてSHOWROOMというライブチャットサービス企業を保有していましたが(売却済み)その時に貸金決済法をかなり勉強したと思われます

米アプリ調査会社アップアニーによると、日本国内における2017年上半期の動画配信アプリの「収益」第1位はSHOWROOMでした(なお「利用者数」の第1位はYoutube)
サブスクリプション全盛の時代において、無料でも制限なく全部視聴でき、アイテム購入毎に課金という「サブスクの対極」にあるようなSHOWROOMの「投げ銭ビジネスモデル」。
ただ日本の法律では、投げ銭サービスを資金移動業の登録をせずに行うと資金決済法に反する可能性が生じます。SHOWROOMすなわちDeNAはいかなる仕組みで、資金決済法に抵触しない投げ銭サービスを実現したのか?

投げ銭は「為替取引」にあたる可能性があります
為替取引(顧客から依頼を受けて資金を移動する振込送金のようなサービス)は、従来は銀行等でなければ行えませんでしたが、2010年に施行された資金決済法により1回あたりの送金額が100万円以下であれば「資金移動業者」に限って行えるようになりました
銀行以外の一般事業者が投げ銭サービスを行おうとする場合、資金移動業の登録をする必要があります。しかし資金移動業者として登録が認められるためには、送金サービスで受領した金額の100%以上の額の供託義務や(資金決済法43条2項3項)、本人確認義務を要するため(犯罪収益移転防止法4条)、そのハードルは高いものとなっています。実際に資金移動業者の登録をしている法人は、現時点(俺白鳥瞳が先ほど確認した時点で)でLINE Pay株式会社や株式会社メルペイなど82社しかありません

 

※マネーロンダリングに関して現在金融機関では厳しくチェックします全ての日本国内在住者に対し


このように資金移動業登録のハードルが高いことに加えて、「ライブ感」「その場の勢い」が重要となる投げ銭サービスにおいては、本人確認など迂遠な手続きが求められる現在の資金移動業のスキームをそのまま導入するのはなじみづらい面が否定できません

 

そこで資金移動業=ストレートな送金サービスではなく、各社とも様々なアイデアで投げ銭「類似」のサービスを展開していることになります。具体的には①現金の代わりにポイント(前払式支払手段)を送るサービスや②収納代行スキームを用いたサービスなどです。各サービスの具体例を紹介します

現金をそのまま送金するサービスだと資金移動業に該当してしまうため、現金の代わりにポイントを送るようにしたサービスです。ユーザーはサービス事業者からポイントを購入し、購入したポイントを相手に送る仕組みとなります。この種のサービスをいくつか紹介します

Kyash
プリペイド式の決済手段で、Kyashアプリに現金やクレジットカードからチャージしておけば、ネットでの支払い等に使えます。ただし一旦チャージ(購入)した金額を、その後に現金化することはできません

はてなポイント
はてな内のサービスで使えるポイントです。
はてなポイントを他のユーザーに送信できる機能(はてなポイント送信機能)だったのですが、2018年11月28日付でポイント送信機能の提供は終了したとのことです

Osushi
購入した「お寿司」(バーチャルコンテンツ)を送信できるサービスです。
もらった「お寿司」は本マグロ(本物)やウニ(本物)と交換できるとのこと。
→Osushi
※2018年初頭のローンチ時は送ってもらったお寿司を現金化できるとの触れ込みでしたが、現在は修正されています

これらの特徴は
まずポイント(バーチャルコンテンツ)を有償で購入すること
現金ではなく、あくまでポイント(バーチャルコンテンツ)を送っていること
ポイント(バーチャルコンテンツ)の現金化はできないこと(購入者も受領者もできない)

受領したポイントを換金できるならば、結局現金を送っているのと同じ(=為替取引)であり、資金移動業と評価されるため、換金できないポイント(バーチャルコンテンツ)を送る仕組みにすることで資金移動業への該当を回避していることになります。

上記のポイント(バーチャルコンテンツ)のような、対価を得て発行され、物を買ったりサービスを受けるために使用できるポイントのことを「前払式支払手段」といい(資金決済法第3条1項)、資金決済法は一定の規制をかけています(発行保証金の供託義務や届出、有効期限の表示義務など)

 

収納代行スキームとは、何らかの商品やサービスの対価を支払う際に、サービス事業者が買主から売主に代わって代金を受領するスキームのことで、公共料金のコンビニ払いなどもこれにあたります。収納代行スキームは2018年11月時点では資金決済法が規制する資金移動業にあたらないとされています。収納代行スキームを用いた送金サービスを実現しているのが「Paymo」です

割り勘アプリPaymo
食事代などを代表して(立て替えて)支払った人は、他のメンバーに対して割り勘分の代金を請求できるわけですが、この割り勘代金の送金と受領を、代表支払者に代わって行ってくれるサービスです
Paymo利用規約では、割り勘を以下のように表現しています。飲み会メンバーはお店に飲み代を連帯して負担(連帯債務者)、代表者が飲み代全額を立て替え払いすれば、代表者はお店の飲み会メンバーに対する代金債権に法定代位し、他メンバーに対する代金請求ができる。単なる割り勘作業を法律的に因数分解すればこのような表現となるのは面白いですね

Paymoが資金移動ではなく収納代行サービスであるといえる根拠は、割り勘代金の支払いという原因取引があることです。実際は飲みに行ってもないのに割り勘を装って送金すれば、単なる送金サービスとなってしまい資金移動業に該当してしまいます。そのためPaymoでは、割り勘の前提となる原因取引の根拠資料として、レシートの添付を義務付けています。レシートの添付は、Paymoがサービスの適法性を維持するために不可欠な要素というわけです。
なおPaymoは前払式支払手段を利用したサービスではないため、割り勘代金の支払いを受けた側は当然現金として出金することが可能です

それではSHOWROOMすなわちDeNAは、いかなる方法で投げ銭サービスを実現しているでしょうか。その秘密はSHOWROOMの会員規約に記載されています

・Show Gold(ショーゴールド)とは、当社の指定するコンテンツ(デジタルアイテムを含みます。)を使用するためのポイントをいいます。
・SHOWROOM 会員は、Show Gold を当社の定める方法により使用することで、当社の定める範囲のコンテンツの使用権を取得することができるものとします。Show Gold は当社の指定するサービス内でのみ使用することができます

・SHOWROOM 会員は、当社が特に認めた場合を除き、Show Gold 及びコンテンツの使用権を他の SHOWROOM 会員その他第三者に使用させ、または貸与、譲渡、売買、質入等をすることはできないものとします。
・SHOWROOM 会員は、当社が特に認めた場合を除き、Show Gold の払戻し、または Show Gold と当社の指定するコンテンツ以外のコンテンツとの交換を求めることはできないものとします。
・SHOWROOM 会員が退会等により本サービスの利用資格を喪失した場合は、未使用分のShow Gold も消滅するものとします

 

※これは基本的にポコチャなどの日本国内で運営しているライブチャット企業全てで同様です

 

SHOWROOMにおいて、投げ銭をしようとする視聴者は、まず「ShowGold」を購入します。「ShowGold」は、SHOWROOM内でライブ配信者に投げ銭(ギフティング)する際に必要となる花束や東京タワーなどのギフト(デジタルコンテンツ)を購入する際の代金決済に利用できるもので資金決済法上の「前払式支払手段」に該当するものと考えられます(SHOWROOM株式会社は、前払式支払手段(自家型)発行者として届出をしています ※私白鳥瞳が先ほど確認した時点では1,194社 ありとあらゆる有名企業もしくは業種が登録しているようなイメージ

 

そして「SHOWROOMライブストリーミング配信規約」「ライブストリーミング配信ガイドライン(SHOWROOM会員用)」によれば、SHOWROOMは

  • 視聴者数、コメント投稿、デジタルコンテンツの使用実績等に基づいて、SHOWROOMが独自に定める方法によって各ライブストリーミング配信を評価し、配信者に評価ポイントを付与すること
  • 評価ポイント1ポイントにつき1円を配信者に分配金として支払うことができること
  • 評価ポイントの算定方法、分配方法の支払方法はSHOWROOMが自由に定められること
※これもポコチャなどと同様です やはり大企業ほど悪らつです
 
つまりSHOWROOMすなわちDeNAは、配信者がライブ配信中に視聴者から投げてもらえたギフトのみならず、コメントや視聴者数に応じた自社独自の基準によって配信者に対して分配金を支払っているのであり、視聴者の投げたギフトがそのまま配信者に届いているわけではないことになります。視聴者から配信者にポイント(前払式支払手段)を送信させて一定の手数料を控除するシンプルな仕組みではなく、独自の評価基準で算出した分配金を配信者に支払う点でユニークなシステムであり、投げ銭のようにみえるが投げ銭ではない、いわばバーチャル投げ銭システムといえます
 
※違法にならないように無料アイテムがあるとの考えも成り立ちます。すなわち日本国内で運営している企業が投げ銭類似システムをする場合、無料アイテムがないと貸金決済法違反になる可能性が高いということです
 
SHOWROOMすなわちポコチャなどのバーチャル投げ銭システムは、難解な資金決済法の壁をクリアするためのひとつの解です。投げ銭(類似)システムは、ライブ配信などの動的なコンテンツのみならず、今後はテキストやイラストなどの静的なコンテンツ配信においても実装が進んでいくことが予測されるところ、コンテンツ配信サービス事業者としては、資金決済法その他の法律に抵触しない適法な投げ銭(類似)システムの導入を本気で検討すべき時代に来ているといえます
 
※やはり大企業ほど悪辣だなあ