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「人を殺さない兵器なんて無いんだよ」
 
 
 
 
「あたし、もう死んだほうがいいんかなぁ…恋してるんだ。ごめんね。生きて、いたいんだ」
 
 
 
 
「男が女の気持ちなんて、わかってんじゃねーよ!」
 
 
 
『最終兵器彼女』2000年/著者・高橋しん
 
 
 
 
 
柴門ふみさんの「女ともだち」という作品の中で、主人公が自分が片思いの相手とともに空爆から逃げまどうという妄想をふくらませるシーンがあります
 
 
 
 
「あなたの心が見えない。地震がおきればいい。ソ連が攻めてくればいい。核が頭上でサクレツすればいい。なにかがおきればいいのに…」
 
 
 
 
『最終兵器彼女』は、この妄想を妄想として終わらせず、実際に主人公たちが空爆に襲われ街全体が最終戦争へと飲み込まれてゆきます
 
 
 
 
そしてヒロイン「ちせ」は、ある日突然、戦争の切り札である最終兵器になってしまいます
 
 
 
 
おいおい~
 
 
 
 
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この現実に、彼氏であるシュウジくんは動揺します
 
 
 
 
そりゃそうだ~
 
 
 
 
内容が、その可愛らしい絵柄とは裏腹にかなり難解かつ哲学的でした。。秘密を知れば、もっと好きになる-7017.gif
 
 
 
 
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シュウジとちせは、決して初めからお互いを好きだった訳ではありません
 
 
 
 
シュウジは「顔が可愛いから」ちせは「度胸だめし」という理由で、ただなんとなく付き合い始めた二人なのでした
 
 
 
 
シュウジは言います
 
 
 
 
「好きになってみねぇ?」
 
 
 
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高校の頃の恋愛の始まりって、確かにそんな感じだったよなぁって思う
 
 
 
 
けれどちせは最終兵器。シュウジも、そんなちせを支えることの難しさを知り、大きく葛藤をしながら必死にちせを愛します
 
 
 
 
実感の湧かない戦争に飲み込まれていくシュウジとちせ
 
 
 
 
そして兵器として、女の子として、シュウジの彼女として、世界の切り札として、もともとひ弱なちせは最期まで葛藤し、壊れてゆきます
 
 
 
 
北海の地と戦争を舞台にした、あまりに切ない恋の物語
 
 
 
 
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この漫画を読んで、ふと頭に浮かんだ、よしもとばななさんの「幽霊の家」という作品の一節があります秘密を知れば、もっと好きになる-7017.gif
 
 
 
 
「体だけでもなく、気持ちだけでもないその繋がりを育てながら、抜き差しならないくらいに二人だけの空間が膨れ上がっていく。
私たちは色々なところへ旅をするのだろう」
 
 
 
 
「それは一見単純な人生だが、実は七つの海を冒険するのに匹敵する巨大な流れに属する何かなのだった」
 
 
 
 
シュウジとちせは一生懸命に恋をします。感じたのは、シュウジにとって、きっとちせが最終兵器だろうとデビルマンに変身しようと、そんなことはどうでもよかったんじゃないのかな
 
 
 
 
 
この物語は、ただ一生懸命に生き、恋をした二人の、大叙事詩なのでした
 
 
 
 
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