年老いた今、あてもなく彷徨える醜態ながら、姿を隠し、なにがしかの声を発する。

全てを奪われ、ただ生きているだけでありながら、まだあきらめられずにいる。

 

無だけが、なにがしかの助けと願い、長い間思いをめぐらしたが、鈍い頭には何も響かなかった。

ある夜、砂浜にうずくまり有とはなにかとふと思い、そのとき不思議なことがおこった。

 

無はわからなかった。しかし、有はどこにもない。

その瞬間、この世には、始めもなく、終わりもない、1,2,3の数字もなくなった。有限的なものなどなにもない、すべてが無限。

有限は、死、非現実的であり、無限こそ生、現実である。

有とは、人の迷いの産物、生きていたい、存在し続けたい欲望の産物。それは死。

ありもしない死後の霊まで持ち出し、存在し続けたいのだ。

 

昔、磯辺を散歩したとき、小魚がさっと身を隠した。こんな小さな生き物さえ生きのびるため身をかくす。不安が襲う。人の心の不安は生命の定めでもある。いつまでも有り続けたい、、その思いがなくなることはあるのか。