――では、M1「ル・ポレン」から、楽曲の説明を。

M はい。今回の収録曲は大体2010年代に書いた曲が

ほとんどですが、この曲は一番古くて・・・

おそらく1995年頃に書いたものです。

ただ、この曲に合う女性ボーカルがなかなかいなくて、

ずっと世に出せていなかったという。

今回、undoを始動させる際にふと思い出して、

典型的な一番バッターだと思うので、1曲目にしました。

 

――”一番バッター”というと?

M 僕が勝手にそう言ってるんですけど・・・

アルバムの1曲目が合うタイプの曲ってあるでしょ? 

たとえばYMO「テクノデリック」の「ジャム」とか、

典型的な一番バッターだと思うんですよ。

これから始まるアルバムのワクワク感を表しているというか。

洋楽で言うと、ブライアン・フェリーの

「センセーション」とかが好きですね。

 

――フェリーのアルバム「ボーイズ&ガールズ」(1985)の

1曲目ですよね。

M はい。渋~くてカッコよくて、ある程度テンポ感もあってね。

「ル・ポレン」もああいうイメージでいきたいなと思って。

あと、ザバダックの「蝶」という曲の、

妖しくはかなげな女性ボーカルの感じが好きで、

あの曲のイメージも加味しました。

「蝶」はアルバムの1曲目ではないけど、

個人的には一番バッター向きだと思うんですよね。

 

――タイトルの「ル・ポレン」は、フランス語で「花粉」

ですよね。ピエール・バルーの曲が想起されます。

M 確かに、最初に「ル・ポレン」という言葉を知ったのは

ピエール・バルーでした。この曲を作ったとき、

メロディーと同時に「ル・ポレン」と出てきたので、

これを拝借しました。

ただ言葉の響きが良かっただけで、

意味は関係ないです。

もちろん、バルーの曲とも無関係です。

 

――歌詞は「ル・ポレン」だけですね。

M これ以外に歌詞を付けたくなかったので、

延々と「ル・ポレン」が続くわけで・・・。

ボーカルは入っているけど、ほぼインストみたいな感じですね。

アルバム「SPY」で言うと、M5「ニューオーダー」、

M8「キーラ」も同様で、自分では半インスト曲と呼んでます。

undoの方向性を示す最初の曲という意味でも、

これが1曲目で良かったかなと思います。

 

――いきなりボーカルから始まるのが印象的ですね。

M 最初、ドラムのオカズを入れたりして、

イントロを作っていたんですよ。でも試行錯誤するうちに

「いっそボーカルから始めてみようかな」と思って。

とはいえ、シャネルズの「ランナウェイ」みたいに、

ボーカルだけで始まる形ではないんですよ。

小節の1拍目から、ボーカルだけでなく、バスドラ、ハイハット、

ベースも同時にバンと出ていますから。

このあたりも「ボーカルはあくまで楽器の一部として扱う」という

undoの方向性が垣間見えていると思います。

 

――制作について、印象に残っていることは?

M 制作メモを読んで思い出したのですが、

この曲は音の仕込みに3日もかかりました。

案外、音選びが難しかったんです。

ストリングスっぽい音はビンテージキーズを使用していて、

オブリガードの音はかなり試行錯誤した結果、

KORGトリニティのA15に。

本当はS37も良かったけど、

これだとオケに入れたときのタチが悪くて、泣く泣くボツに。

いやー、音色って難しいものですよね。

ハンドクラップの音は、久々に

ローランド・サウンドキャンバスを使っています。

 

つづく

 

※楽曲視聴は下記をクリック。

アルバム「SPY」