OKYO FILMEXを見に行ってきた。
Randy Zhang 監督の「東北短編集」。
「ハーフタイム」「相談」「祝日」の3作品と同時に見られるというお得なセット。
東北と言っても日本ではなく、中国の東北地方のことである。
私は、「ハーフタイム」と「相談」は見ていたが、「祝日」は見たことがなかった。
しかも、どれもスクリーンで見るのは初めて。
舞台挨拶があるかな、と思って、一列目を予約したのだが、思ったよりスクリーンと近かった!多分、左端は見えないほど、近い。
どの作品にも、俳優の阿部力さんが出ている。
ハーフタイム
「ハーフタイム」。
中国人技能実習生が日本で苦労する話。組合に頼るしかないが、その組合が実習生を搾取しているように見える。そして、日本人が実習生を見下しているように見える。
阿部さんは、いつも猫背で、ダウンの中に顔半分を埋もれさせるようにしていて、泣きそうな顔をしている。
組合を変えようとしても上手くいかない。
友人は、不法就労になろうとかまわないと、逃走した。
組合にも、日本時にも無下に扱われる日々。これは、精神をえぐられていく。
実習生を助けようとする期間の人は、「耐えろ」「私を信じろ」と言う。
本当に信じられる人なのだろうか、そこはまだわからない。
阿部さんの仕事の面談の途中に、不当な扱いをされた実習生が、組合の長を襲いにやってくる。
殴られて、人が倒れているのに、阿部さんは無感情な感じで椅子に座り続け、悲しそうな顔をして、そして、涙をポロリとこぼす。
その後、暗転。
そして、飛び出しナイフをもてあそぶ阿部さん。
表情が、全く変わって、怒りに満ちている。
目に力が宿り、口元がキリリと引き締まっている。
彼は、どうするのか、と言うところで終わる。
阿部さんの、がらりと変わる表情が、印象に残る。
なぜ、タイトルが「ハーフタイム」なのだろう。
相談
「相談」
英語のタイトルは、Life is snow.
弁当屋で働く男の人。同僚に殴られたと警察で訴える。
弁護士がいて(阿部さん)、彼は相談者の主人公にが見せた破られた雇用証明書に対して「テープで貼ってください。」と事務的に言い放つ。
しかし、たばこを賄賂にしようとしたり、会社に無断で入っていたり、殴った人の犬を蹴ったりと、だんだん主人公に不利な事実がわかってくる。
いらだつ主人公。
弁護士も、聞いていない事実が次々出てきて、イライラし始める。
弁護士が中国語で話しかけたりしているので、主人公は中国と関係があるのかと観客は思う。
そして、彼が中国残留孤児だったことがわかる。
主人公が蹴った看板に、警察署のモットーとして「私達は、正義のために戦います。」と書かれている。
いろいろと不利な証拠がそろった時、弁護士がちょっと来い、と主人公を呼び出す。
始めは敬語だったのに、「いいかげんにしてくれよ。」と怒鳴る。
主人公は、「俺は日本に適応できなくて、おまえはできてるというのか。」と言う。
弁護士は、実は、彼の息子だった。
「俺は、あんたのようになりたくなかった。だから、自分の力で必死にがんばった。」と感情をあらわにする弁護士(阿部さん)。「母ちゃんだって出て行ってしまった。もう、勝手にしろ!」
怒っているが、弁護士も悲しんでいる。いらだっている。父親に?自分に?
なぜ、日本語のタイトルと英語のタイトルが、全く違うのだろう?
祝日
「祝日」
サッカーのチームに入れたい父親。でも、中国人、と言う国籍が問題にされる。
「息子は日本国籍ですよ!」と必死で言う父親(阿部さん)。
トライアルは成功しそうで、親子で祝杯を挙げる。
今日は、勤労感謝の日だ。
しかし、練習の中で、チームの子供に差別的な発言をされる子供。
足を負傷する。
そして、トライアルに受かるかと思えたが、結局、外国人と言うことがネックになり、落ちてしまう。
屈託のない笑顔で「記念写真を撮りましょう。」と言うコーチ。
みんな合格証なのか修了証なのか、何か証書をもらえる中、阿部さんの子供だけがもらえない。それでも、記念撮影は始まる。
他の親子とは距離のある二人。
けがをした息子を負ぶう父親。どうやらこの父親は、違法の白タクをして金を稼いでいるようだ。
家に帰ると、白タクの元締めのような人がいて、「金がもらえるなら、緑だろうが白だろうが、何だっていいじゃないか。」と言う。
奥さんが、「私が話すから。」と外に出てくる。
「彼はあなたを首にしようとしているのよ。」と中国語で言う。
3作品を通して、「たばこ」「サッカー」という隠れアイテムがあるのでは?と思った。
・実習生が虚無感の中で吸うたばこ。(ハーフタイム)
・賄賂のたばこ。(相談)
・息子の合格が嬉しくて吸う父親のたばこ。(祝日)
サッカーは、
・途中でサッカーの試合をしていてもめる。(ハーフタイム)
・警察署内で白黒のユニフォームを着たサッカー選手達。(相談)
・日本人のみ合格させるサッカーチーム。(祝日)
もしかしたら、他にも隠れアイテムがあるのかもしれない。
「車」とか?
・逃走する同僚が車で移動しようとする。(ハーフタイム)
・雪の中で車を走らせる弁護士。(相談)
・白タクの運転手。(祝日)
もう一つ印象に残ったのは、色だ。
青い色の「ハーフタイム」
白い色の「相談」
オレンジ色の「祝日」
これも、監督は狙っていたのだろうか?
舞台挨拶があり、監督が大連出身だとか、父親によく殴られたとか、サッカーをやっていたとか、松本清張をいつも読んでいる、とか、いろいろ話してくれた。
阿部さんは、2番目の弁護士役が自分とかけ離れていて難しかったそう。
阿部さんは、さすが、役者だ。
どの役も、「その人」にしか見えなかった。
表情豊かで、歩き方から姿形から、声のトーンまで3役全く違う。
さすが。
一夜限りの贅沢な夜だった。