第52回江戸川乱歩賞受賞作品
作者: 早瀬乱
出版社: 講談社
初版: 2006年8月

明治25年、東京の神田が大火事になり、火は二日に渡って燃え渡った。
見物に行く者、自分の家財や家の心配する者、様々な人がいる中、奇妙な人を目撃する人もいた。
火の街を疾走する人力俥夫の姿である。

一方、田舎で暮らしていた内村実之には、昔から勉強が出来た兄がいた。
兄は東京で帝国大学の大学生・・。
のはすが、急に怪我をして田舎に帰ってくる。しかも大学も辞め、田舎で就職すると言い出した。
そして兄は、「三年坂で転んでね」という謎の言葉を残して死んでいった。



物語は主人公の内村実之の話と、
東京の塾講師である高嶋鍍金(メッキ)と共に行動する立原総一郎の話が軸になり進みます。

実之は、自分の兄の死の理由、失踪している父の事、
兄の残した「三年坂で転んでね」のことを調べるために東京に上京します。
同時期に、ひょんな理由で神田大火事を調べることになった鍍金と立原。

「誰が神田大火事の犯人なのか」、「内村の兄はなぜ死んだのか」、「三年坂に隠された意味とは」。
どのように問題が解決し、実之と鍍金、立原はどこで関係してくるのかも一つの見物だと思います。


「三年坂」が重要な鍵となっているだけあって、東京の坂がいっぱい出てきます。
東京の地理や地名もたくさん出てくるで、わからない方には読みづらいかもしれません。
私は、東京の坂が物語の鍵となり扱われたことが面白かったです。

後は何といっても「スラム・クリアランス問題」。
近代的な街並、建物、水道整備問題を解決するためにはどうすればいいか?という問いに、
偏った考えで解決しようとした若者や知識人。

今回の作品とは関係ありませんが、大正時代の関東大地震を思い出しました。
天災が原因で街並が近代的になるのは復興になりますが、
人為的な要因により街並をつくり出そうとするのは、意味が違う自分としては感じました。


余談ですが、江戸川乱歩賞受賞作品なので、後ろに選考評価も記載されています。
他の候補作品の評価も記載されていますが、プロの方の選考評価は凄いなとまじまじ感じました・・。
この時の選考委員は、乃南アサさん、大沢在昌さん、真保裕一さんなどです。