世界陸上で砲丸投げをやっていたが、この競技には特別な思いがある。
野人は三重県でこの競技に出て勝つつもりだったのだ。
つもり・・と言ったって、あくまでつもり・・で、やったことはない。
やったことがないのに何故勝つつもりでいたか、それなりの不純な動機がある。
御存じのように野人にはスポーツマンシップのかけらもないしスポーツが好きでもない。
汗をかくのは生命の危機でもあり本能が嫌がっている。
テーマ、スイミン愚物語スポーツマンヒップに書いてきたが、成り行きとはいえ結果的に水泳競技を賭け事に利用してがっぽりウィスキーをせしめた。
賭けたほぼ全員が勝った気になっていたからそれだけでも幸せだっただろう。
30歳で三重県水泳大会で優勝して物語は終結したが、翌年も優勝、あっさりV2を果たして引退した。
痛い目に遭ったので2度と賭ける人もなく退屈でつまらなかった。
そこで、次の賭け事イベントとしてボクシングを選びジムを探したのだが近くにはない。
それにボクシングに出ると言っても武術が得意な野人に賭ける人もいなかった。
世界陸上を見ていて思いついたのがこの砲丸投げと走り幅跳びだ。
やったことはないが、何とかなるだろうと県記録を部下に調べさせた。
走るのが嫌いと言う理由でまず助走が長い走り幅跳びを削除、ホーガン投げに絞った。
県記録は17m前後だったか忘れたが、自己流で投げて15m近く飛べば可能性があるから、その辺で重さがそれに近い「鉄の塊」を拾ってきて思い切り投げてみた。
可能性を確信して野人は俄然トレーニングをやる気になった。
目指すは優勝あるのみ。
スポーツ店へホーガン買いに行ったのだが、そこで・・・断念した。
「あれ・・? ホーガンは?」と部下が言うので・・
「バカタレ、鉄の塊にあんな大金が払えるかい~」
当時も、宵越しの銭を持たない野人はビンボーだったのだ。
自分でタマを作った方が安上がりだが、鉄は熱しやすく冷めやすい・・・
それに・・皆に話を持ちかけても回答は似たようなものだった。
「う~ん・・お前なら有りうる、賭けない・・」
水泳も・・今度は「国体で優勝出来るかどうかで」と話を持ちかけたが・・
誰も賭けに乗って来ず、ヤマハリゾート社長までが
「可能性高いな・・負ける勝負はせん」とケンもホロロだった。
陸上進出の野人の野望は断たれ、水泳で国体優勝を目指す理由もなくなり、この時から人を喜ばせるささやかなスポーツファイターとさよならした。