この程度のことは元々傷だらけの野人には痛くも痒くもないのだが、じいさんやヤマハグループ全体にご迷惑をおかけしたことには変わりない。
その敗北を期に海猿どもに理ベンジを誓い、海事六法、関係書をすべて買い込み猛勉強を始めた。
武力ではなく理による平和的な理ターンマッチであり、これも護身術なのだ。
海事法の仕組みをよく知らず甘く見ていた。
野人1人ならともかく、海事法の責任の範囲は船の所有者である会社や代表責任者であるじいさんにまで及ぶ。
野人VS海猿の戦いはサイが投げられた。
言葉の語尾だけで判断するなら・・
人が猿に負けるはずもない。
それからすぐに船乗り業務を再開、一ヶ月後に野人を取り調べた海ザルのボスと鹿児島の繁華街でばったり会った。
「キャップキャップ!あいつですあいつ!」と部下が指さす方を見ればボス猿がいるではないか。
「あの野郎・・」と野人が行こうとすると、「一発かますんですか?」と言う。
「バカタレ、そんな野蛮なことするかい 堂々と宣戦布告じゃ」
ボス猿は正面から近づいた野人を見ると驚いたがにっこり笑って頭を下げた。
「おい・・」と言おうとしたら横からちっちゃい男の子が・・
「おじちゃん・・こんにちは」とご挨拶した。
野人は中腰になってニッコリ笑い「ぼく幾つだい?」と頭を撫でると年を答えた。
「うちの家内と息子です」とボス猿はご丁寧に紹介してくれた。
「あの時は大変でしたね・・」
「そう・・大変でした」
しばらく話をした後引き揚げると部下タレがまた言った。
「キャップ・・何すか? アレ・・宣戦布告~? からっきしいつもの迫力が・・」
「バカタレ・・あれでいいんじゃ 気持ちは伝わった」
「子供に・・?」
一発頭をゴン!と殴り2人は夜のネオン街へ向かった。
理ターンマッチの準備はまだ出来ていない。
それに部下タレにはわからないだろうが野人が護身術で戦うのは人ではない、法でもなく見えない敵なのだ。
罪も憎まず人も憎まず、まして子供は無邪気で可愛いものだ。
見習うべきものは多い。
続く・・