海洋学から自然科学、海の生き物、陸の動植物と生命の仕組みを研究して数十年になるが、植物から学んだことが一番多かった。
野人流の分類で、生まれた時から「世話が必要」とそうでないものに分けて考えて見よう。
動物では脳細胞が複雑で高度になればなるほど成長までの世話を必要とする。
親の世話なしでは生きられず、体は脳に比例してゆっくりと成長する。
そうでないものは生まれた時から自ら環境やエサを選び単独で生きて行く。
必ずしもそうではないが、全体としては細胞が複雑になる程、世話を必要とする程、寿命が長い。つまり長く生存する為に脳や体の機能が進化したとも言える。
しかし植物はそうではない。動物と同じように進化はして来たが、生命誕生の時からそれぞれの役割を持った種のほとんどが今も生存している。
生命誕生を創造した微生物から地球最長寿を誇る樹木まで完全な形で生き残っている。
種は発芽する場所を選べず、どのような環境でも自らの判断で生きようとする。
過酷な環境では何年間も耐え忍び、適していればさらに種を増やそうとする。
選べないからこそ風だけでなく、虫や鳥や動物と共存して多くの種を広範囲に広げようとする。
種は、生き物が住める環境を創り、共に生きると言う確固たる使命を持っている。
それは生命誕生から数十億年かけて培われた遺伝子なのだ。
そこにわずか数百万年の人知が及ぶはずもなく、歴史を遡れば人間も植物が誕生させてくれたものなのだ。
野人は植物に対して感謝の気持ちと敬意を払っている。
だから、健全に育つ環境は整えても世話を焼こうなどとは考えない。
土壌創りも生育も彼ら自身がやること。
植物は数億年もそうして生きて来た完全なる生き物なのだ。