糖尿病関連:高血糖緊急症について
高血糖緊急症は以下の種類があります。①糖尿病性ケトアシドーシス(DKA:diabetic ketoacidosis)②高浸透圧高血糖症候群(HHS:hyperglycemic hyperosmolar state)結局はどっちも高血糖なんでしょ、何だかいつもややこしくて分からなくなるなー・・・とぼやきつつ。まずはそれぞれの違いについて、病態・症状・所見・原因・治療の順でまとめていきたいと思います。①糖尿病性ケトアシドーシス(DKA:diabetic ketoacidosis)【病態・症状】身体への異常なストレスによるグルコースの上昇によりインスリンの絶対的欠乏が起こることで、通常の糖新生ができなくなる代わりに、血中のケトン体の生成が促進されて、ケト酸(β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸)という強有機酸が生成されて血液が酸性に偏る(アシドーシス状態)。ケト酸のうちアセト酢酸は呼吸で代謝されて、呼気からアセトン臭を発する。悪心・嘔吐・および小児では腹痛が加わったものも症状としてある。嗜眠や傾眠は、より重度の症状である。患者は脱水やアシドーシスによる低血圧および頻脈を呈する場合がある。→アシデミア(血液pH<7.35)を代償するために、患者は速く深く呼吸をする (たくさん呼吸することで血中二酸化炭素濃度(PaCO2)を減らして血液をアルカリ化する:クスマウル呼吸)【所見】高血糖(≧250mg/dl)、高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸の増加)、アシドーシス(pH≦7.30、重炭酸塩濃度≦18mEq/l)クスマウル呼吸(ケトン臭)※インスリン依存状態【原因】*身体への異常なストレスEx・急性感染症(特に肺炎・尿路感染症)・心筋梗塞・脳卒中・膵炎・外傷*耐糖能を障害する薬剤(グルココルチコイド)または体液喪失を促進する薬剤(利尿薬)、SGLT2阻害薬の使用→SGLT2阻害薬は,1型糖尿病および2型糖尿病の両方でDKAの発生に関与している、とされています。*糖尿病治療に対するアドヒアランス不良ちなみにこんな覚え方もあります!DKAの誘因「5つのI」・Insuin:インスリン欠乏、インスリンの中断・Infection or Inflammation:感染症や炎症・Ischemia or Infarction:虚血や梗塞・Intra-abdominal disease:膵炎、胆嚢炎・Iatrogenic:医原性(IVH[中心静脈栄養]、ステロイド、薬剤性)【治療】・生理食塩水の静注:通常1~3Lの生理食塩水を急速静注後,生理食塩水を1L/時・低カリウム血症があればその是正・インスリンの静注(血清カリウム≥3.3mEq/Lである場合)→0.1単位/kgをまず静注でボーラス投与し,次に生理食塩水に混注して0.1単位/kg/時で持続静注→血糖値が200mg/dL(11.1mmol/L)未満に低下するときは,5%ブドウ糖を含む0.45%食塩水の静注に変更すべき・まれに,炭酸水素ナトリウムの静注(治療後1時間の時点でpH<7の場合)②高浸透圧高血糖症候群(HHS:hyperglycemic hyperosmolar state)ハイパーオスモーラー、ハイパーグリセミック・・・そのまんまですね。何だかDM既往の高齢者で好発しそう。【病態・症状】著しい脱水が先行し高血糖をきたし、インスリンの相対的欠乏、循環不全を来す状態を指します。錯乱や見当識障害から昏睡までと幅広い意識変容。通常は、腎前性高窒素血症(AKIなどで腎機能が急激に低下して血中に窒素化合物が増える)・高血糖・極度の脱水(高浸透圧を伴う場合と伴わない場合とがある)の結果生じる。DKAとは対照的に、焦点発作または全般発作および一過性の片麻痺が生じうる。【所見】HHSにおける特徴的な血液検査所見は、以下の通りです。(1)血糖値が600mg/dL以上(2)血漿浸透圧が350mOsm/L以上(3)pH7.2以上、HCO3-18mEq/L以下ケトーシスはあっても軽度で、アシドーシスはなし【原因】*急性感染症およびその他の病態*耐糖能を障害する薬剤(グルココルチコイド)または体液喪失を促進する薬剤(利尿薬)Ex・利尿薬・ステロイド薬・フェニトイン・β遮断薬・シメチジン*糖尿病治療に対するアドヒアランス不良【治療】・生理食塩水の静注:15~20mL/kg/時・低カリウム血症があればその是正・インスリンの静注(血清カリウムが3.3mEq/L以上である場合)→最初の1Lの生理食塩水静注後に0.1単位/kgをボーラス投与し、続いて0.1単位/kg/時を静注→急激な浸透圧の低下は脳浮腫を起こす危険性があるので注意する※一旦血糖値が250~300mg/dLになったら,ブドウ糖を追加する急性期の治療における血糖値の目標値は250~300mg/dL(13.9~16.7mmol/L)1.Kitabchi AE, Umpierrez GE, Miles JM, et al: Hyperglycemic crises in adult patients with diabetes.Diabetes Care32: 1335–1343, 2009.つまり、●異常な高血糖状態になったことで対応できるインスリンがもう全然ない!というところからスタートし、ケトン体の生成という流れで起こるのがDKA●脱水で相対的に血糖値が上昇して対応できるインスリンはあるけど、それ以前に循環不全が起こっているのがHHSということ、かな。どちらも電解質補正が重要ですが、急激な浸透圧の変動での脳浮腫などの神経学的な合併症に注意が必要そうです。症状が脳卒中に類似する場合がありその鑑別が重要となる場合もあるそうです。著明な高血糖でアシドーシスがない場合にはHHSと診断、と日経メディカルの記事に書いてありました。笑DKA/HHSは合併している場合もあり、危機的な処置の段階ではどちらも、水分・電解質・血糖の管理と代わりありませんが、そもそもこういった患者さんの指導に直面した時に、次に起きないよう予防するためには薬剤師としては原因は何で、誰にどういった指導して行く必要があるのか。またそれを、他の職種と情報を病棟でシェアして行くのは大切なのことではと思います。(言うのは簡単、やるのは難しい・・・・・)指導と情報共有のスキルも薬剤師としては大事ですね。うん、コミュって力大事!笑水分・電解質・血糖の管理についてもまとめられたらまとめていこうと思います✨