午後も大分過ぎると、外来の人はみんな帰っていきました。
残っている人は日帰り手術を受ける人たちだけになりました。
準備の出来ている人たちは、手術着を来て順番に椅子に座っていました。
気が付くと徐々に人数が増えていました。
その列の中にどう見ても友だち同士のような人がいました。
その時は目の手術を友だち同士で受ける???と頭の中がはてなマークでいっぱいでした。
(その人たちに後々助けらることになるのです。)
飛び込みで手術をしてもらうことになった私は、今から手術に向けての準備をします。
「ガチフロ」と「ミドリンP」という目薬を10分おきにさしていくことになります。
「ガチフロ」10分おいて、「ミドリンP」10分おいて、「ガチフロ」という感じです。
「ガチフロ」は規定回数をさすと、あとは手術開始まで「ミドリンP」をさし続けます。
「ミドリンP」は瞳孔を広げる薬で、それを手術までさし続けるわけなので、
視界がぼやーとして見えなくなります。
午前の検査のときからさし続けているので、一日中見えない状態が続きます。
途中で手術着を着せられて先ほどの人たちと合流しました。
手術着といっても、自分が着ている服の上からガウンのように羽織るだけでした。
先ほどの人たちはまだしゃべっていました。
夕方になると、先頭の方に並んでいた人から手術が始まりました。
まだ10人以上並んでいて時間がかかりそうな感じだったので、
友だち同士のような人たちに思い切って声をかけてみました。
「皆さんお知り合いなんですか?」
なんと前回同じ日に手術をして、2回目の手術も偶然同じ日だったそうです。
そこから周りに居る人たちを巻き込んでおしゃべりが始まりました。
手術経験者の座談会のような感じになりました。
手術を待っている人たち皆でしゃべるというのは、ちょっとレアな光景だと思います。
手術は全然痛くない(もちろん個人差はあると思いますが)ということ、
すごく腕の良い先生で、紹介であれ自分で探し当てたのであれ、
この病院を引き当てたということはすごく強運の持ち主だという話でした。
すごく遠い県から来ている人もいて驚きました。
もちろん目の手術は怖いけれど、この時間で緊張が大分ほぐれました。
すごくいい日に手術を受けれたと思いました。
途中順番替えがあり、私が先頭になりました。
恐らく時間的猶予がなくて先に回してくれたのだと思います。
オペ室の中に入ると中で手術を受けている人がいました。
オペ室といえば真っ白というか明るいイメージがありましたが、
真っ暗で手術台の周りだけスポットライトで明るくなっているような感じでした。
前の人が手術を受けている間に、次の人が中に入って準備をするようでした。
病院のホームページに笑気麻酔があると書いてあったので、
聞いてみると全員に笑気麻酔を行っていますと言われました。
はじめにイソジンのような色の液体で目を洗ってもらいます。目の消毒です。
次に麻酔の目薬をさします。ちょっと沁みる感じでした。
沁みるといっても我慢できない感じではなく、クールタイプの目薬のようなスースー具合の感じに近いです。
注射で麻酔をすると思っていたので、目薬の麻酔だったことでかなり安心できました。
ここからは一切目を開けないように言われます。
もちろん逆の目は開けても構いません。
しばらくすると、歯科医院にあるようなリクライニング式の椅子に座って手術が始まりました。
手術をする目の側だけが開いた布をかけられて、目を開いて固定されました。
一番怖い瞬間です。
目を動かしてしまったらどうしようと心配していましたが、
目を固定されたのでその心配はなさそうで、ある意味安心できました。
何かあれば手を挙げないで、言葉で知らせてくださいと言われました。
動くのは厳禁というわけです。
何かというのは例えば、咳やくしゃみをしたい、痛いなどです。
先生の説明では手術中は見えないから大丈夫だと言われていました。
そんな怖い思いはさせませんと。
でもうっすらと器具の影などが見えるのでちょっと焦りました。
でもそれははじめだけで、麻酔がしっかりきいてくるとぼやーと白い感じでほどんど見えなくなりました。
外でのおしゃべりで恐怖感は大分減ったけれど、
やはり緊張はしているので、吸って吐いて、吸って吐いてと呼吸に集中していました。
緊張しすぎると呼吸が上手くできなくなりそうだったし、何かに集中していた方が気がまぐれるというのもあります。
麻酔が良く効いているのと、目は神経が鈍いのか痛みは全く感じませんでした。
でも目を針でつつかれているなとか、目を触られている感覚はありました。
経験者の人が、普通の注射の方が全然痛いと言っていたのは本当でした。
麻酔が効いているといっても局部麻酔なので、先生の声や機械音は普通に聞こえます。
機械がウィーンウィーンと鳴っている音や、アラーム音など・・・
目が見えない分、神経が研ぎ澄まされているような感じでした。
先生が途中で「あちゃ~粘度があるなぁ。」と言いました。
返事をするべきが迷いましたが、呼びかけられたわけではないので黙っておきました。
下手に返事をして身体が動いたら怖いからです。
しばらくこのような時間を過ごし、
「無事に終わりました、楽にしてください。」と声がかかりました。
一気に緊張が解けました。
オペ室の外に出ると、眼帯をつけるために椅子に座るのですが、
眼球の中に医療用ガスを入れたため、
後頭部を床と並行になるくらいの、うつ伏せの体制を取らなければいけません。
歩く時は前が見えないので手を引いてもらいます。
とにかく無事にオペ室から出てこれてそして手術が成功したことで、失明の危機から脱出できました。
ここ最近の中で一番の嬉しい瞬間でした。
身体がきちんと機能していることって素晴らしいことなんだなと分かりました。
また十数時間後には診察のために病院に来なければならないのですが、家族と一緒に一旦家に帰ります。
もちろん帰りの車の中もうつ伏せの体制で。
オペ室に入って出てくるまで一時間くらいだったので、
消毒と麻酔の時間を考えると大体手術時間は30分以上かかったような感覚です。
もっと早く終わると思っていたので、ちょっと難しい手術だったのかもしれません。
話は変わって、笑気麻酔は鼻から笑気を吸うものだと思っていましたが鼻に何かを当てられたとかはなかったです。どういうからくりなんだろう???
長くなりましたが、最後まで読んでくれてありがとうございました。
硝子体手術を受ける人の参考になれば嬉しいです!