▼今回の記事は「素直さとサービス精神」について書きたいと思います。
▼私がかつて役者の勉強をしていた時のレッスンの一風景です。
▼アクセントのお稽古で私は標準語のアクセントをクラスの最後の方まで習得できませんでした。その最後のチャンスの時、課題はたしか、「犬がワンと鳴く」というような文だったと思います。
この’ワン’のアクセントに毎回詰まっていたのですが…
お調子にのって、犬の鳴きまねをしたのです。もちろん、大目玉を覚悟で。
そうしたら、先生、「アクセントはダメだけれども、犬に免じて合格にしてやろう」とおっしゃって頂いたのです。
▼このやりとりの後の先生の言葉は今でも忘れられません。
「我々の仕事は人に喜んでもらう職業だ。さっきの武藤のはダメな例だが、サービス精神だけはいい。我々はサービスをして、人に喜んでもらって、人様からお金を頂戴するのだ」
と。
▼ずっしり来ました。それまでは上手くやってやろう、とか、正解ばかりを求めていましたが…目的、根本は”人に喜んでもらう”種の職業なわけです。どのお仕事でも人に喜んでもらう事は目的の一つであり、サービス精神は必要だと思います。
こと、お芝居の正解においてはサービス精神がなくなっては成り立たないと実感した瞬間でした。
▼さて、もう一つ。素直さ。
これはこのブログでも何回も出てくるキーワードですが…私の養成所時代のお話をもう一つ。
▼上記のアクセントがなかなか習得できない時、先生がおっしゃいました。
「横浜生まれは自分を都会人と思っているから、素直じゃないんだよな~」
これもまた、ズシリと来ました。そうです、その時まで、素直さのかけらというか・・・「オレこそ合っている」としか思っていなかったわけです。
▼また、違う先生がこんなお話をしてくださいました。
「役者に必要なのは技術もあるけれど、素直さはもっと大事。ディレクターや演出の言うことを即できなければ、仕事にならないからね。自分の思いもあるだろうが、それは二の次、三の次。まずは言われた事ができなければ、自分の考え思いなんか到底だせるわけがない」と。
▼これもやはり心に響きました。上手くやればいいとか自分をかっこよく見せるにはどうしたらいいか?なんてことを常に考えていた私には本当に重く響きました。そうなんですよね…まずは作品の役と真剣に向かい合わなければいけないことに気付きました。
▼演出の勉強を重ねると更に先生方のおしゃっていたことが身にしみて理解できてきました。