▼はじめて読んだ時はもう何年も前ですが、つい最近、再度読みました。
▼物語は
『一介の丁稚から叩きあげ、苦労の末築いた店も長子も戦争で奪われ、ふりだしに戻った吾平の跡を継いだのは次男孝平であった。孝平は、大学出のインテリ商人と笑われながら、徹底して商業モラルを守り、戦後の動乱期から高度成長期まで、独自の才覚で乗り越え、遂には本店の再興を成し遂げる。親子二代“のれん”に全力を傾ける不屈の気骨と大阪商人の姿を描く作者の処女作。』
(新潮社サイトより引用)
とあります。
▼このサイトにも書いてありますが、山崎文学の原点という部分があります。ぼくがはじめて山崎豊子先生の作品を読んだのが「白い巨塔」です。テレビドラマにもなった物語です。
▼この暖簾もそうですが、「大阪の文化」の一部に触れることが出来ます。関東出身で関東で生活しているぼくとしては、「へぇそうなんだ」という驚きにも似た感覚をうけた部分がありました。
▼戦後から高度成長期というある種の動乱の世の中で、再興を成し遂げる主人公の強さと弱さも含めた人間くささを感じました。
▼山崎豊子先生の作品は特に「戦後」「戦争」というキーワードを感じさせるものが多いです。ほとんどがそうだと思います。先生の遺作である「約束の海」にも”戦わないための軍隊”について触れられておりました。
▼この『暖簾』は先生の作品の根本であると感じました。といいますのも、取材を物凄くされて作品を書かれてきた先生の処女作です。この処女作についても、ご自分の生家をモデルにしたと言われています。
▼「白い巨塔」「約束の海」「大地の子」「不毛地帯」「二つの祖国」「沈まぬ太陽」などの名作に流れる、共通した血液のようなものが、この物語の孝平から感じるのです。
▼今はあまり重要視されないのかもしれませんが…「暖簾」の大切さ、「信用」の大切さということが描かれている物語だと強く感じました。日本の伝統といいましょうか、「暖簾」の重みというものを読んでいて感じました。
▼山崎豊子先生の物語は複数巻で完結することが多いですが、この物語は1冊です。大阪の文化を感じながら読める作品で有りました。
▼山崎豊子先生の処女作である『暖簾』です。