▼サウンドエンジニアの仕事を習いたての頃…師匠がやっていた行動に当時は『?』と思っていたけれども…後で『!』となることがあります。

▼当時、ぼくはその師匠について、録音の方法や理論、道具の使い方を学んでいた時のことです。

▼ある時、とあるドラマCDの作品のミックスを行っていて、最終段階のチェックに入っていたていました。
師匠はスピーカーから聞こえる役者さんの声を聞いて、頷くと今度はヘッドフォンをかぶって、同じものを聴き始めたのです。

▼ぼくはその時思ったのです。
「なんで同じものをもう一度聞くのだろう。さっきので確認は終わったはずじゃ?」
と。

▼その後、ぼくが一人でエンジニアをするようになって、初めて師匠があの時とった行動が理解出来たのでした。
それは、「スピーカーで聞いた音とヘッドフォンで聞いた音では違う事がある」というものです。
厳密に言えば、エフェクト(音の効果)の具合によってはヘッドフォンで聞く場合とスピーカーで聞く場合とではその効果の現れ方が違う場合のあるのです。
ですので、師匠はあの時「聞こえ方」を確認していたのだなと知り、「?」が「!」になった瞬間でもありました。

▼お芝居でもそういうことがあると思います。講師の先生や役者さんが仰っていたこと、やっていることが「?」と思っても、それらはやはり道理を知っている人がやっていることですから何か理由があるわけです。
もちろん、その時聞けば理解はしたと思います。しかし、「!」とするのは自分で体験した時のみだ、とぼくは思うのです。