葬送の車列に割り込んでくる

僕は今の仕事をするはるか前、ハイヤーの乗務員をしていたことがある。

その時の仕事として、「葬儀」の仕事があった。
お寺さんをお迎えにあがったり、
出棺から火葬場、ご自宅へのお送りなどであった。

特に出棺の時には気を使った。
１号車である場合、霊柩車のすぐ後を走行する。
霊柩車と１号車の間には車を割りこませないようにするのは…
ハイヤー業界や葬儀業者の間では言わば常識的な事であった。

もっと厳密に言えば、
霊柩車から会葬者が乗るマイクロバスまでの葬送の車列には、他の車の割り込みはさせないように運転するのが基本だった。

ハイヤーを辞めてもその考えが染み付いているのか、葬送の車列には割り込まないようにしているし、交差点などでは譲るように心がけている。


考えてみれば…
ハイヤーの乗務員を経験していなくても・・・
葬送の車列に入ってくる車の運転手は何を考えて割り込んでくるのだろうと感じる。
葬送の車列。
故人を送り出す葬送の車列。
そこに、譲ることもなく、割り込んでくるドライバーはよっぽど周りが見えていないのだ、と感じる。

人を亡くし、悲しみの車列に何故突っ込んでいくのか。
もちろん道路交通法上は、葬送の車列を優先しろ、などとは書いていない。
しかし、自分と一切関係がなくても、割り込んだ方も割り込まれた車列もいい気分はしないし、故人との繋がりも表すであろう車列に入っても平気な神経にはなりたくないな、と思っている。

こういうことを書くと、古臭いとか、今の時代にそぐわない、と言われることがあるが…
それでも、人が生き、亡くなり、車列を組んで故人を送り出しているのだから…自分と関わりがなくても、よく考えてハンドルを握りたいと感じている。