舞台公演をやる上において。
たくさんのお客様が来てくださる。

お客様は少なからず、時間を割いてお金を支払ってご覧になる。

そして、お客様はその時間とお金を使っていただいた分、作品と役者に期待をする。
・・・ある方はお目当ての俳優に。
・・・ある方は作品の出来に。
・・・ある方は泣きたいために。
・・・ある方は笑いたいために。
いろいろな期待を持って来てくださる。

一方、お客様が持っていないのは、台本だ。
その公演がど言うふうに運ぶか、なんていうのは、一切わからない。
だから、俳優が台本には無いことをしてもお気づきにならないことが多い。

しかし、お気づきになる場合がある。
その空間にふさわしくない動作や所作を行った時だ。

一生懸命お稽古をつみ、公演の舞台に立ったとしても、
その場、その瞬間に起こるすべての事に対応できなければ、
所謂「素」に戻ったり、段取りだけを意識してしまうことになってしまう。

もう一度書くが「お客様は台本を持っていない」
だからこそ、台本を拠り所以上に頼ってしまっては・・・
「あ、間違えた」ということになったとしたら・・・
お客様は興ざめだ。

もちろん、台本を拠り所にして一生懸命をお稽古をし、研鑽を積む事は基本だ。
だけれども、それだけではダメだ。
『生』の舞台に立つ以上、その舞台上で役として生きていなければ、
お客様の期待に応える事はできないと考えている。