お芝居をしているどうしても”距離”というものと切っても切り離せないと考えます。
これは他の出演者の役との物理的距離感および論理的な距離感の二つに分けられると思います。

例えば舞台上、演出によって舞台の上下に分かれて立つ恋人同士。
しかり台詞はとっても甘いささやく会話。
これを(技術的な声の響かせ方などは別にして)相手との本当の距離分の声で演じたら・・・
二人の間柄は台無しです。


つまりこう言う事なのです。
役者さんは実際の距離(物理的な距離)と心の距離(論理的な距離)の二つをきちんと把握してお芝居をしなければならい、と私は考えています。

特に難しいのが論理的な距離です。
これがなかなか難しい。
なぜかと言えば、台本上に書いてない事が相手役によって変わってくる訳ですから・・・
相手の表情や物の言い方、仕草をしっかり見て聞かなければ、この論理的な距離を伸ばす事も縮める事もできません。

つまり、その場所の制約(演出や収録の都合、劇場などの都合)を経て、更に役同士のその時その時の距離や方向をきちんと把握しなければ、作品が台無しになってしまいます。
専ら、物理的な距離だけに目が行きがちですが、それだけでは足りません。足り無いどころか、そればかりに目が行ってしまうと自分勝手な誰も相手にしない、他の人が出ているのにまるで一人でやっているようになってしまう訳です。

同時に相手役ばかりでなく、台本上、いっさい接点の無い(台詞をかわさない)役とも論理的な距離はかならず存在しますし、舞台で言うなら装置、小道具、衣装などなどに対しても論理的な距離および物理的な距離をきちんと把握するべきだと私は考えています。