もう、初代プレイステーション(PS1)のゲームを「レトロゲーム」に分類してもよい頃だろう。

 PS1で2000年に発売されたシミュレーションゲーム『高機動幻想ガンパレード・マーチ』の1周目をクリアした。

 PS1で発売されたのち、ダウンロード版としてPS3とPSPで共用できたのでプレイしていた。ところが、自分はシミュレーションゲーム慣れした人間ではなかった。『信長の野望』も『三国志』も『大戦略』も、シリーズ中プレイしたゲームが1本もない。そのために、セーブポイントから復活できないほど各種パラメータがボロボロになってしまい、詰んでしまった。やる気をなくしてしまい中断していたのだが、キャラクターに魅力的なところを感じており、数々の謎と伏線が置き去りにされたままでモヤモヤしていたので、初めからやり直してみての1周目クリアだった。

 

 初代プレイステーション(PS1)では大量のゲームが発売され、くまなくチェックして大量のゲームをプレイすることは、時間的にも経済的にも不可能だった。むしろ、武術・武道の魅力に取りつかれていた時期でもあった。このゲームを知ったのは、確か多根清史の『教養としてのゲーム史(ちくま新書・2011年)』だったはずである。「自由度の高いTVゲーム」として紹介されており、戦闘に明け暮れることも、恋愛等の学園生活にふけることも、果てはキャラ全員の靴下集めに没頭することも可能とのことであった。一本道RPGと呼ばれる日本のロールプレイングと逆を行く、自由度の高いシミュレーションゲーム、かなり興味を持ってしまった。そして、前述のダウンロード版のほか、中古のPS1版も入手した。

 

 また、自分は「こんな中高年になって、学園生活のノスタルジアに浸るような後ろ向きな生活で良いのか」と、他のゲームも含めて青春真っただ中のゲームを避ける傾向にあった。スポーツでも恋愛でもいいが、自分が若い頃に達成できなかったことを補完しようとしている気がして、また「あの頃は良かった」と現在を軽視して過去に逃げようとしている気がして、どうもプレイを敬遠していたのだ。ところが、PSPでPS1版『高機動幻想ガンパレード・マーチ』、3DSでDS版『クイズマジックアカデミーDS ~二つの時空石~』をほぼ同時にプレイし始め、何だか箱庭的な学園生活の楽しさがわかってきたのだった。

 

 この『高機動幻想ガンパレード・マーチ』は、『新世紀エヴァンゲリオン』の影響を受けているのは間違いなく、謎めいた世界観が散りばめられている点も似ているし、テレビ版『エヴァンゲリオン』が終了した時点で全ての謎が解明されなかったことと、1周目をクリアしても謎の全貌が明らかになる訳ではない『ガンパレード・マーチ』はやはり似ていると思う。また、今になって思うと『エヴァンゲリオン』は、「学園生活」と言う「日常」に、「使徒との死闘」と言う「非日常」が入り込んでくるところに描写の妙があったように感じる。『ガンパレード・マーチ』も「学園シミュレーション」と言う「日常」と、「幻獣との死闘(戦略シミュレーション)」と言う「非日常」の交錯が真骨頂であることに気付いた。のちにPS2で発売される『新世紀エヴァンゲリオン2』において、『ガンパレード・マーチ』のゲームシステムの一部が採用されたことは、非常に興味深い事実である。

 

 では、雑感をば・・・

 

●最近でこそ「オープンワールド」と言うジャンルができて、広過ぎて何をしたらよいのかわからないゲーム、何をもってクリアとすればよいのかわからないゲームも増えたが、たったCD1枚の容量で、ここまで箱庭的リアルと、複数のキャラクターがいろんな場所で生き生きと個性的な行動を本当にしているように見せかけるAIを実現したのは凄いと思う。

 

●それだけに、プレイ中にひとりでもキャラクターが死んでしまうと、現実の生活に影響が出るほどに落ち込む。自分たちは、現実で戦争によってクラスメイトが次々と死んでいくような状況は経験していない世代である。たとえゲームの中でも、昨日まで仲良くしていた人物が戦死するのが非常にこたえることを知った。いや、仲良くしていないキャラでもフッといなくなるのは、かなりの精神的ダメージを受ける。

 

●前述の通り、キャラクターやストーリーや伏線に興味を持っていても、シミュレーションゲームが苦手な人や、シミュレーションゲームの経験が乏しい人は、キャラクターが次々と死んでしまったり、パラメータ的に詰んでしまったりして、プレイをやめてしまうかもしれない。全ての伏線に触れることはできなくても、キャラやストーリーの面白さに触れることのできる「SLG初心者モード」を用意してほしかった。

 

●また、セーブして再開できるのは翌日朝なので、午前中に一生懸命体力や知力等のパラメータを上昇させることに集中しても、突然午後に開戦(出撃)してその戦闘で致命的なミスを犯していまい、またその日の朝のパラメータ上昇から始めなけれならないことが多々あった。そのためにも、もっとセーブできるタイミング(昼とか放課後とか)の多い「SLG初心者モード」を用意してほしかった。

 

●このゲームにハマる人が多く、いくつものバグが発見されているにもかかわらず、バグがあるまま、PSP、PS3、PS-VITAでもダウンロード版を遊ぶことができた。ところが、バグを削除してグラフィックを向上させたリメイク版(あるいは、最終的に全てのキャラでプレイできるようになるリメイク版)を発売する気は、ソニー・コンピュータ・エンターテイメントには全くないようである。『シェンムー1&2』もリメイクされたし、『MOON』も昔のクオリティのままSWITCH(スイッチ)で遊べるようになったのだから、もう少しリメイクを真剣に考えてほしい。ちなみに、システム変更した続編の『ガンパレード・オーケストラ』3本は、『ガンパレード・マーチ』ほどの人気はないようである。しかも2本目の『緑の章』は、致命的なバグが多いらしい。

 

●プレイ中に2人の「芝村」が登場し、「芝村一族」との言葉も登場するが、ゲームデザイナーの氏名が芝村裕吏であることに気付く。

 

●どちらかと言えば、シューティングゲームやアクションゲーム中心に遊んできた自分であるが、読書も趣味のひとつである。この『ガンパレード・マーチ』をプレイして、シナリオ(テキスト)がうまいと、世界観にぐんぐん引き込まれることに気付いた。前述のように、自分たちは現実で戦争によってクラスメイトが次々と死んでいくような状況は経験していない世代である。戦争における心理状況や、日常と異なる点を、うまくテキストに落とし込んでいると思った。また、それぞれのキャラのセリフ等に、思わせぶりで意味深な内容を含ませたり、警句(箴言)っぽく表現したりしており、何かの伏線かと思わせたり、神秘性を増したりするのに貢献している。まだ1周目で謎の全てに触れた訳でもないが、伏線回収はあるのか等、さらにさらにプレイしたくなるうまい文章表現が多い。

 

●現実世界ではゴールデンウィークが明けて少し経過したことになる5月11日で自然休戦期となり、ゲーム(の1周分)は終了する。それまで生き残っていれば、基本的に何をしてもよい自由度の高さが特徴。

 

●ファミコン時代にアスキーが『ベストプレー プロ野球』を発売した。他の『ファミスタ』等が、自身がプロ野球選手となった気分で暴れまわるゲームであったが、『ベストプレー プロ野球』は、監督になった気分で選手の集合体であるチームを動かして育てるゲームであったと言える。同様にアスキーから発売された『ダービースタリオン』も、競馬のジョッキー気分になるゲームでもなく、競馬で賭けて儲けるゲームでもなく、馬を育てるゲームであった。この『ガンパレード・マーチ』は、人型兵器に乗って幻獣を倒しまくるゲームとして遊べるだけでなく、小隊指令となって、部下を指揮することも可能だし、整備士となって兵器等を整備することも可能である。恋愛やアルバイトに精を出すことも可能である。

 

●2周目になってから、キャラが音声でしゃべることに驚く。「ガンパレ攻略本」と言うアイテムも2周目以降でないとお目にかかれないようだし、2周目以降から本番のゲーム。

 

●多くのアニメや小説の中に、トリックスターは登場する。このゲームでは、ブータや来須等がトリックスター的である。しかし、何と言っても岩田裕が抜群のトリックスター性を醸し出している。

 

●このゲームでは、会議や陳情で目的を達成できる。会議にはそれほどプログラム容量を割いていないはずだが、何となく会議の雰囲気を近似的に再現できていて凄いと思った。個人的には、みんなで食事をするシーンの会話のパターンが少な過ぎると感じた。

 

●1対1のコミュニケーションでいろいろな目的を達成しようとしているところに、3人目が割り込んでくるとできなくなるシステムは面白い。「第三者」ってことだろう。しかし、3人目が割り込んできたときのいろいろな行動選択のパターンを用意してほしかった。割り込んできても選択によっては、当初の目的を達成できるとか、そのために体力や発言力を消費するとか。

 

●自由度が高く、靴下集めのようなお遊びを入れてくれたのなら、ファミコン・ディスクシステムの『ナゾラーランド 第2号』内に収録されていた『わらしべ』のように、あるアイテムを別の人物の持つ他のアイテムと交換することを繰り返し、最終的にレアなアイテムや、ゲーム全体の攻略が楽になるアイテムに変えることができるイベントも入れてほしかった。

 

●ある人型兵器に乗りこむキャラクターが、全速力で敵の中心部に突進し近接攻撃を行ない、敵の集中砲火を受けて亡くなるパターンが多々あった。人型兵器の両肩に展開式増加装甲を装備して、防御力を高めたうえ、足を遅くする必要がある。

 

 

 

※関連リンク先

『高機動幻想ガンパレード・マーチ』本日9月28日で20周年! 絶望的な戦いに身を投じ、世界の真実に触れ、親友に恐れられた日々を振り返る (2020年9月28日) - エキサイトニュース (excite.co.jp)

 

『高機動幻想ガンパレード・マーチ』が発売された日。学生兵として仲間のNPCたちと過ごす濃密な日々は唯一無二の体験!【今日は何の日?】 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com (famitsu.com)

 

高機動幻想ガンパレード・マーチ - Wikipedia