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右側の鶏籠を伏せたような山が鶏籠山、左側奥が的場山。的場山中腹に見える白い所が、野見宿禰墓(野見宿禰神社)、山頂に見える白い建物が、無線中継所。
 
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龍野城(平山城)。ここから入って、塀を左に沿って行くと登山口だが・・・
 
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鶏籠山山頂は、龍野古城本丸跡。山城。
 
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的場山山頂。下に見えるのが、三等三角点・点名「竜野」。
 
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的場山山頂からの展望。右に揖保川、家島諸島が見える。奥には、うっすらと淡路島らしきものも。
 
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野見宿禰墓(野見宿禰神社)。樹木が伐採してあり、展望が良い。
 
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童謡の小径の両入口。白鷺山の北西と南東(赤とんぼ荘付近)にある。
 
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三木清の哲学碑のある「哲学の小径」だが、なぜか石碑は「哲学の道」。あまり期待しないように。「童謡の小径」のおまけ的存在で、自動車も通る舗装道路である。
 
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三木清の哲学碑等。はからずも、「秋の日」について記してある。
 
 
 京都では、大文字山を歩く前に、「哲学の道」を歩きました。
 
 
 尾道では、千光寺山にある、「文学のこみち」を歩きました。
 
 
 そして、自分の住む播磨にも、「哲学の小径」と「童謡の小径」と「文学の小径」があるのです。
 それは、たつの市の白露山(四等三角点の点名は「日山」)にあります。
 たつの市の誇る二大偉人と言えば、「赤とんぼ」の作詞者である詩人・三木露風と、時代に翻弄され残念な死を迎えた哲学者・三木清でしょう。
 京都市左京区の「哲学の道」が、実際に西田幾多郎や田辺元、三木清が、歩きながら思索を巡らせたと言われる道でした。それに対し、たつの市の「哲学の道」は、三木清が実際に歩いたのではなく、三木露風の「童謡」と三木清の「哲学」を対にしてできた顕彰碑ならぬ「顕彰の道」とでも言うべき存在で、道中には三木清の哲学碑があります。
 興味深いのは、京都の「哲学の道」は、現在の名称が決定するまでは、「哲学の小径」等と呼ばれていたことがあり、反対にたつの市の「哲学の小径」は、たつの市ホームページ上では「哲学の小径」となっているものの、その道にある石碑には「哲学の道」と刻まれており、Wikipediaでも「哲学の道」として記述されていることです。
 先に述べておくと、「童謡の小径」がメインで、「哲学の小径」はそのオマケのような存在でした。京都の「哲学の道」のような雰囲気を期待して、遠方から来られるとガックリするかもしれません。自動車も通る舗装道路となっています。
 
 鶏籠山(けいろうざん)は、たつの市にある標高218メートルの低山、的場山(まとばやま)も、たつの市にある標高394.2メートルの低山、白鷺山(しらさぎやま)も、たつの市にある121.4メートルの低山です。三木露風は、少年時代の回想で、以下のように述べています。「私の郷里は後ろに山を負い、前に河を控えていた。山は鶏籠山、台山、白鷺山と云い、北と西とに聳え、(中略)私は少年の頃、一人山を登るのが好きであった。」ここで言う「台山」が、現在「的場山」と呼ばれている山です。また、的場山から亀山(城山)の辺りは、近畿自然歩道の一部となっています。
 
 さて、今回もネット上で古書でしか入手できない『はりま歴史の山ハイキング(横山晴朗・著/神戸新聞総合出版センター・刊)』を参考に、計画を立てました。
 JR姫新線の本竜野駅から龍野橋を渡り、龍野城→鶏籠山→両見坂→的場山→野見宿禰墓→童謡の小径(白鷺山)→哲学の小径となっています。自分は、歩行者専用の龍野旭橋を利用しました。
 
 最近は、山歩きと読書をシンクロさせることが、多くなりました。高野山町石道へ向かうときは、列車の中で『日本宗教史(末木文美士・著/岩波新書)』を読んでいました。大文字山と哲学の道へ向かうときは、『人類哲学序説(梅原猛・著/岩波新書)』を読んでいました。今回は哲学の小径へ行くため、列車の中で『哲学のヒント(藤田正勝・著/岩波新書)』を読んでいました。
 
 龍野旭橋を超えたあと、平成25年4月から整備され一般公開されている三木露風生家へ立ち寄りました。古に思いを馳せつつ龍野城へ。歴史に詳しい方はご存じかと思いますが、もともと龍野城は後述する鶏籠山の山頂にある山城でした。画像の通り、現在山頂の本丸跡には、「龍野古城」の石碑があります。その後1577年に羽柴秀吉に攻められて開城し、江戸期になって麓の平山城となりました。
 
 『はりま歴史の山ハイキング』にある通り、龍野城内の塀を塀を左に、左にと沿って行くと鶏籠山の登山口を見つけました。ところが、何と山道にバリケードがしてあり、注意書きがあるではありませんか。山道に蜂の巣を二つ発見したので、登れないとのことです。おそらく、スズメバチの巣なのでしょう。昔の自分なら、「早く駆除しろよ。」と苛ついていたかもしれません。しかし、こちらはレジャーです。蜂にすれば生活であり、生命保存と種族維持に必須の行為です。『生きるチカラ(植島啓司・著 /集英社新書)』と言う本には、「偶然に翻弄されること」をある程度楽しむべきであると書いてありました。その例として、「パック旅行」ではない「偶然を楽しみ、その都度判断する自分の旅」を勧めていました。生命の危険が及ばない程度に、ハプニングとアドリブは楽しむべきです。ある人にとっては、蜂の巣のある道を自己責任で通過するのがハプニングとアドリブかもしれませんが、両見坂の方から回り込んで鶏籠山山頂へ行けることがわかり、自分の場合、道を蜂に譲り両見坂を選択することがアドリブを楽しむ行為でした。生家からの近さから、今回蜂の巣で通れなかったルートが、少年時代の三木露風が一番よく歩いた道でしょうが、今後ここを歩く機会が、一度もない訳でもないでしょう。
  
 両見坂は、コンクリートで舗装された歩きやすい道でした。ひょっとして両見坂の語源は、右(東)に鶏籠山、左(西)に的場山を見ながら登るからなんでしょうか?間違っていたらごめんなさい。
 
 鶏籠山山頂は、龍野古城の本丸跡でした。今まで歩いた山の中では、姫路市夢前町にある置塩城跡(城山)に雰囲気が似ていました。そこからやや下りて、二の丸まで行きましたが、ここで二度もスズメバチと遭遇したので、これ以上最初登ろうとした道に近づくのは危険と判断し、両見坂まで戻りました。
 両見坂から的場山へ到るまでの305メートルピークまではかなりの急登です。画像は掲載していませんが、元気よくウラジロが茂っている山道には、バイタリティを感じました。
 
 的場山山頂には、三等三角点・点名「竜野」がありました。南側の樹木が伐採されており、揖保川から家島諸島、小豆島まで見える展望でした。淡路島らしきものも、うっすらと確認できました。
 近畿自然歩道から逸れて、野見宿禰墓(野見宿禰神社)を経由し、哲学の小径方面へ行くつもりですが、山頂には分岐点らしきものが見当たらず、最初、どこを歩けば行こうととしている道に出るのかわかりませんでした。山頂にはNTTの無線中継所がありますが、そこから南西に行ったところに国土交通省の無線中継所があります(5枚目の画像に写っている)。その無線中継所を、南側へ回り込むように下りていくと、野見宿禰墓へと続く道がありました。
 
 野見宿禰墓(野見宿禰神社)は、樹木が伐採してあり、展望の良いところでした。石の扉と石段が印象的でした。いつも思うことですが、初めて行くところに下り道で核となるところ(本堂・本殿)に至るのは、やや興醒めです。やはり参道を登っていって近づく高揚感が大事です。
 
 龍野公園まで下りて行きました。それから赤とんぼ荘のある白鷺山を目指します。先に「童謡の小径」の入り口(北西側)を見つけましたので、「哲学の小径」は、後にしました。京都の「哲学の道」は風情を楽しみ、古に思いを馳せる感じでした。尾道の「文学のこみち」は、石碑の文学作品を味わいながら、やや上下動のある道を楽しむ感じでした。たつの市の「童謡の小径」は、やはり山道にある童謡を刻んだ7つの歌碑を巡るものです。この7つの童謡は、たつの市にゆかりがある訳ではありませんが、郷愁を感じさせる名作が多いです。そして、この「小径」の最大の特徴は、歌碑付近に近寄ると、それぞれの童謡のメロディーが流れる点でしょう。これは、博物館等のハコモノの中で歌詞を読み、メロディーを聞くのとは全く違った感覚で、癒されました。歌碑が作詞者の出身地の石で作られているところは、凝っていると思います。ちなみに、「赤とんぼ」のメロディーは、「童謡の小径」とは別の場所である「赤とんぼ」の歌碑と三木露風の胸像のところで、聞くことができます。7つの選ばれた曲は、「里の秋」「夕焼小焼」「七つの子」「ちいさい秋みつけた」「みかんの花咲く丘」「月の砂漠」「叱られて」です。「七つの子」の歌碑のあるところには、四等三角点・点名「日山」がありました。
 
 全ての歌碑を巡ると、赤とんぼ荘の駐車場辺りの出ました。その南東の「童謡の小径」の左側に、画像の通り「哲学の小径」の始まりがありましたが、8つ目の画像の通り、舗装された道路で、風情がありません。見るべきところは三木清の哲学碑等ですが、彼の詩がありました。
 『しんじつの 秋の日 てれば せんねんに 心をこめて 歩まざらめや』
 
 偶然ですが、「童謡の小径」に選ばれた曲の内容と言い、三木清の詩と言い、秋に訪れてよかったと思いました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

※関連リンク先

「山歩き まとめ(改)」 
https://ameblo.jp/musyaavesta/entry-12624377490.html