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トレッキング的なスタート地点は九度山駅になるが、町石道としては慈尊院から。
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慈尊院の上にある丹生官省符神社。
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雨引山展望台。紀の国の紀の川が見える。
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町石道から逸れて、丹生都比売神社(天野大社)の楼門へ。
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急登を終えると、大門が見える。疲れの後にこの門が見えると、感極まる。
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壇場伽藍(壇上伽藍)の根本大塔。
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総本山金剛峯寺の山門(正門)。最も古い建造物。シャクナゲがきれいな季節。
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道中で見かけたシャガの花。雪彦山に行ったときも、咲いていた。
 
 
 自分は、父方が天台宗で、母方が真言宗でした。
 昨年7月に、比叡山を滋賀県側(JR比叡山坂本駅)から登り、延暦寺と三角点を経由して、京都府側(叡山鉄道修学院駅)に下りました。
 
 
 そして今回は、南海電鉄九度山駅から、町石道(ちょういしみち)を歩いて、高野山を目指します。通常「山」と言うと、円錐状で山頂が尖った場所をイメージしますが、「高野山」と言う名称の特定の山は存在しません。周囲を1000メートル級の8つの山々に囲まれた、標高800メートル程度の平坦地を指します。言わば、盆地のような宗教都市です。
 また、今回歩く高野山町石道と金剛峯寺境内は、熊野・大峯・吉野と合わせて、「紀伊山地の霊場と参詣道」として、ユネスコ世界遺産に登録されています。
 比叡山延暦寺は特定の建造物ではなく、比叡山全域を境内とする寺院でした。高野山金剛峯寺については、明治以降、青厳寺と興山寺を統合した寺院を総本山金剛峯寺と呼んでいます。しかし、もともと金剛峯寺とは、高野山全体を指す名称であったことを知っておくべきです。
 
 さて、予習をしていて心配になってきたのは、山歩きに要する時間と、宿坊へのチェックインの時間です。宿坊初体験なのですが、ビジネスホテル等とは違い、ある本を読むと「宿坊には、夕方5時以前に到着するようにしてください。」とあります。チェックインは午後2時や午後3時からできるところが多いようです。夕食の精進料理は6時か7時ごろからふるまわれ、お風呂は9時や10時くらいまでに入る必要があり、門限も9時くらいのところが多いです。しかも、高野山の飲食店の閉店時間は早い、ときています。反対に、朝は午前6時半や7時くらいに勤行(おつとめ)に参加できるようです。朝風呂のできるところは、ほとんどありません。
 『関西トレッキングBESTコースガイド(昭文社)』では、九度山駅から大門まで6時間15分、『新・分県登山ガイド 和歌山県の山(山と渓谷社)』では6時間25分、『高野山のすべて(宝島社)』では6時間50分、インターネット上の町石道を歩こう会の地図では6時間56分かかるとあります。休憩時間を含んでいるのか、『関西ハイキング2016(山と渓谷社)』では、九度山駅から壇場伽藍(壇上伽藍)まで何と約8時間の記載があるではありませんか。仮に休憩時間を入れて7時間半かかるとして、九度山駅へ午後1時に着けば、大門到着は午後8時半頃となり、大門から宿坊までさらに1.5キロ以上歩くことになりますから、お話になりません。ちなみに、慈尊院から壇場伽藍の根本大塔までが約22キロで、九度山駅から慈尊院までが約1.7キロだそうです。町石道を離れて、さらに丹生都比売神社に寄れば、もっと時間がかかるし、アップダウンが増えます。
 しかも、今回は「行」のつもりで、宿泊用荷物を宅配便で宿坊に送るようなことはせず、比叡山延暦寺のときと同様、全てリュックに背負って登るつもりでした。今までで最大の重さの荷物を背負って、最大の距離を歩くこととなります。伯耆大山を登ったときも、伊吹山を登ったときも、JR六甲道駅から六甲山最高峰まで登ったときも(下りはケーブルカーとバス使用)、これほどの距離と時間は歩いていません。ただ、町石道は、他のトレッキングに比べてアップダウンの少ない、なだらかな道のようです。また、気候の良い時期なので、真夏に登った比叡山ほど、体力を消耗しないかもしれません。
 ちなみに、九度山駅からのち、町石道から逸れて、上古沢駅、紀伊細川駅にもアクセスできますので、体力に応じた様々な計画を立てることが可能です。
 
 JR姫路駅を午前5時46分の新快速で出発しました。新快速としては、この日の始発です。環状線新今宮駅で、南海電鉄高野線に乗り換えました。河内長野駅、橋本駅の乗り換えを失敗したのかもしれませんが、午前9時には、九度山駅に到着しました。3時間ちょっとあれば、兵庫県姫路市から、和歌山県の山間部まで来れるのには、少し驚きます。九度山駅から仮に8時間かかったとしても、午後5時には山上に着きそうです。
 
 地図を見ながら、慈尊院まで歩きましたが、ややわかりにくく、前を歩く別のハイカーを頼りにしてしまいました。慈尊院上がってすぐが、丹生官省符神社です。町石道の最大の特徴は、町石(卒塔婆)なのですが、この慈尊院と丹生官省符神社の間にある180町の町石から始まります。数が減っていき、根本大塔付近の町石が1町石となり、客観的に境内にどれぐらい近づいたのかを感じながら歩くことができます。1町は、約109メートルとのことです。現在でも、町石の8割にあたる150本の石柱が、1285年建立当時のままと言いますから驚きです。
 
 雨引山山頂へは向かいませんでしたが、雨引山展望台で休憩してから、次へ向かいました。三枚目の画像の通り、紀の川が見える良い景色でした。やはり、世界遺産の一部である丹生都比売神社にも寄りたくなったので、六本杉から町石道を離れ、短時間神社を見てから八町坂を上り、二つ鳥居で町石道へ復帰しました。
 
 今までで一番重い荷物を背負って、5時間くらい歩くうちに、何だか手の指がむくんできました。日常生活で手足がむくんだことなどないので、それが「むくみ」なのか「こわばり」なのか、しっかりと判断できませんでしたが、初めての体験でした。
 そして、自分は今まで幻覚も見たとはないし、神秘体験もしたことはありません。いつも、どこか醒めた自分がいる感じです。しかし、肩や脚や心臓が疲労困憊していくうちに、何だか頭がボーッとしてきて、体の痛みを紛らわすために脳内麻薬のようなものが出てきたようです。アルコールで酔っ払ったときとも、寝起きでボーッとしているときとも、少し違う感覚です。疲れたせいで、遠近感と平衡感覚がやや変な感じになってきました。判断力もやや鈍ってきたようで、こんなときに遭難する人が多いのだと思いました。遠くから、ハチかアブかハエかわかりませんが、羽虫のブーンと言う音が聞こえてきました。おかしなことに、これが読経の声のように聞こえてしまうのです。そして、小川のせせらぎが、水の落ちるところ数か所から同時に聞こえるのですが、「せせらぎ」が小川の「ささやき」か、「さえずり」のように聞こえてしまうのです。こんな体験は、初めてでした。これは平日のため、二つ鳥居から大門近くまで、数名の人としか遭遇せず、ほとんど言葉を交わしていなかったせいもあると思います。
 
 クライマックスは大門直前12町石辺りからの急登です。息をはずませながら、赤い大門が見えたときは、ほっとして感極まりました。
 さらに、壇場伽藍(壇上伽藍)の金堂に根本大塔、総本山金剛峯寺等の建築物を外から眺め、宿泊予定の宿坊へやっと辿り着きました。
 何度も休憩を交えつつ、結果として九度山駅から丹生都比売神社経由で、大門まで6時間34分、35475歩、さらに休憩して壇場伽藍まで7時間20分、36676歩でした。
 疲れすぎて反対に、夜は何度も目が覚めてしまいました。残念。もう一度機会があれば、20リットル以下のデイパックで、早歩きしたいものです。
 
 
 自分は『孔雀王』が好きなのですが、残念ながら「裏高野」を発見することはできませんでした(笑)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

※関連リンク先

「山歩き まとめ(改)」 
https://ameblo.jp/musyaavesta/entry-12624377490.html